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第2話 昼休み
次の日から本格的に授業が始まった。今日からは弁当持ちで授業は六限まで。
昼休み。二年A組初の昼食タイム。
ある者は机ごと。ある者は椅子だけ持って移動を始める。さっと寄り集まったり誘い誘われたりしながら、至る所で昼食グループが形成されていく。クラス全体のよそよそしさはまだまだ抜けない。
「涼、一緒に食べよ」
「おっけー」
「椅子だけ持って来いよ」
拓麻に誘われたので、おれは拓麻と花島とその友達の村内君がいるグループへ移動する。黒板に背を向け、自分の席から持ってきた椅子に座った。これといって話したいことがあるわけでもなく、たわいない会話をしながら食べ進める。よくわからない話が始まったところで何とはなしにあたりを眺めた。
新しいクラスだからなのか、友達と一緒に食べている子が大半だった。
一年の時のクラスでは二限の休憩から食べ始め、三限の休憩、昼休憩というふうに、小分けにして一人で食べる男子がそれなりにいて、クラスの男子の半数近くは一人で食べていた。
おれも小分けにして食べることがあったので、やがてそれが染みついて昼休憩に初めて弁当を開いた日でもそのまま一人で食べることが多かった。移動するのが面倒になったっていうのもあった。
そんなクラスで一年過ごした影響か、今のクラスが騒がしく感じる。それでも全員が全員寄り集まっているわけではないようだ。
クラスで唯一、ひとりがいた。
山田さんだった。
いや、もう一人いた。
和泉さんもひとりだった。
息をひそめるようにして食べる姿がかえって目を引く山田さんに対し、和泉さんはあまりに堂々としているというか自然なものだから、ひとりがどうとかそういうつまらない枠外にあって、見落とした。
さまよわせた視線を弁当に戻す。次のおかずに箸を伸ばしたところで花島たちの会話が途切れた。沈黙が生まれる。拓麻はそしらぬ顔。花島はそわそわと目を動かし、村内君は心なしか気まずそうにしている。おれは食べることに集中した。
花島が、くすりと笑った。嫌な性質を含んだ笑いだった。
「和泉ここでもひとり飯してんじゃん」
始まったよ。ため息をつきそうになった。話題がなくなるとすぐこれだ。ガキどうこうというより、単純に嫌なやつなのだ。花島だけじゃない。そういうのは他にもいる。そんな彼らとの関係を投げ捨てたくなるときがある。めちゃくちゃに壊したくなるときがある。できないんだけど。
ははっと村内君が愛想笑いを浮かべる。
「去年も和泉と同じクラス?」
不快ではあるけど和泉さんの過去は気になる。
「うん。あいつほとんど喋んねえし付き合いも悪いから孤立して、一年の途中からずっと今みたいな感じ。まあ所詮は顔採用で仲間に入れてもらったみたいなとこあったからな」
花島を非難しておきながら、花島の言葉にはっとさせられた。
顔採用……。おれも外見がよかったり個性的な人気者を身近に置き、自分を飾り立てようとしたことはなかったか。『ぼくの考えた最強のクラス編成』あれはどうだろう。見栄を意識した選考は行っていないと断言できるだろうか。
「弁当も毎日ひとりで気まずくねえのかな」
「別に普通じゃね? 飯食ってるだけじゃん」
角が立たないよう、おれは慎重に言った。何がおもしろいんだよ、という言葉は飲み込んだ。
「たしかに。変な話だよな、人前でうんこしてるわけでもなし」
そう拓麻が言うと、花島は「きたねえなー」と笑いながら話題を変えた。
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