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お世辞の集中豪雨に満足した銀髪の男は照れ笑いを浮かべながら背中を蓮人に向けた。
細い彼の身体全体から目に見えぬ透明なオーラが陽炎の様に激しく立ちのぼり始める。
「さあ!」
両足を閉じた蛇、オーケストラの指揮者の様に両手を広げクイッと上がる細い顎。
「it's Show Time!」
掛け声と共に突然銀髪の男の細い背中から巨大な翼が一気に生えた。
目の前に広がる雄大で神々しい白い翼。
「......凄い。」
スーツと一体化している不思議な翼はキラキラと一枚一枚がダイヤモンドの輝きを放っている。目の前に溢れる美の極地に蓮人はそれ以上の言葉を失う。
「な。ちゃんと『本物』やろ?」
蛇は得意げに鼻を高く上げた横顔を向けた。呆然とする蓮人の姿をチラリと流し目で確認すると更に鼻を高くする。
「フフフッ」
気分が乗ってきたらしく更に続けて不思議な動作を始める。細い右手の長い指を踊らせ空気を攪拌、突然手元に出現させた赤い薔薇一輪の茎をいやらしく摘んだ。
「かぐわしき香りやわぁ。」
赤い花弁を鼻に近づけ惚ける。
「ワテの名前は『蛇』。知の象徴や。」
蓮人に妖しく囁いた蛇という名の天使はその瞬間明らかに自分に泥酔していた。
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