窮地の生徒会長

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「失礼します。」 生徒会室に入ってみると、 既に私以外の四役は 来ていて、 きっちりと先生がいる 机の前に整列していた。 その机には燦然と輝く 4つの金のバッチと ネクタイが。 私が慌てて列に並ぶと、 先生はコホンと咳払いを ひとつする。 「はい、これで全員 揃いましたね。 では、これより 新生徒会発足前の バッチとネクタイの 授与を行います。」 先生はこう言うと、 私の方をチラリと見た。 「では、まず生徒会長の 日高 凛さん。」 「はい。」 名前を呼ばれて、 条件反射のように返事。 列から1歩前に出て 先生の前にいくと、 通常着用するように 言われている黒い リボンに金のラインが 2本入ったものと、 くすみひとつない、 うちの高校の校章の バッチが渡された。 これを今日からつける ことが許されるのか・・・ さすがに、 気が引き締まる。 これをつけることを 許されるのは、 今いる4人だけ。 私が先生の方を見返すと、 先生はそれを合図に 口を開いた。 「日高さん。 今日からあなたは 生徒会長です。 この学校の顔です。 そのことを自覚し、 これからの学校を より良い方向に 導いて下さいね。」 「・・・はい。」 先生の言葉に、 改めて自分の責任の 重さを感じる。 だが、それに対して、 不安や迷いはない。 この日高 凛、 なったからには 必ずやりきってみせる。 私が1歩後ろに下がると、 先生は次に私の隣に いる男に目を向けた。 「次、副会長の 武市 絢之介くん。」 はい、と返事をした男を チラリと見て、 私は、やっぱりまじまじと 見てしまうな、と思った。 この、武市 絢之介 (たけち あやのすけ) という男、 名前こそ超日本人だが、 実際はハーフ君である。 日本人よりも若干 肌の色が白くて、 日本人が整形してまで 欲しがるようなすっと 筋の通った鼻に、薄い唇、 髪色は外国人特有の 柔らかいグレージュで、 ふんわりと見ただけで 柔らかそうなのが わかる髪質だ。 顔立ちは外国人感が しつこすぎず、 日本人の血と混じりあって 良い具合のハーフ顔である。 そして、目をひくのは その瞳。 グリーンにもグレーにも 見えるような不思議な 目の色をしているんだ。
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