窮地の生徒会長

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制服の襟元にバッチを つけて、今までつけていた リボンを外し、新しい リボンをつける。 さあ、今から新生徒会発足の 全校集会が始まるんだ。 私たちは先生の引率に 従って公会堂に向かった。 舞台のそでにスタンバイ すると、座って待機する 生徒たちが大勢見える。 私、今からあの人たちの 前で演説するのか・・・・ ゴクリ、と喉がなる。 さすがに緊張するな。 私がフルフルと頭を 振って、緊張を何とか 取り払おうとしていると、 「日高さん?」 と、声をかけられた。 振り返ると、そこには 副会長の武市君が。 「緊張してるの?」 武市君はふわりと 甘い微笑みを浮かべて 私を見下ろす。 やばい、天使か。 笑顔が天使だ。 「いや、うん、 ちょっとだけね。」 私が苦笑いすると、 武市君はグリーンの瞳で 私をじっと見つめた。 そして、ふっと、 目を細めて優しく笑う。 「日高さんなら、 きっと大丈夫。 それに、何かあったら 俺が必ずフォローするし、 日高さんは日高さんの 思うようにやればいいよ。」 ね? と私の顔を覗きこむ 武市君の顔は本当に、 「お美しい」という 言葉がぴったりだ。 優しくて、甘い香りの する武市君。 彼と付き合う女の子は さぞかし幸せだろう。 でも、待てよ。 こう言うのに限って 実は裏の顔がドSだったり するんだ。 言葉は丁寧なのに、 言ってることは えげつなくて、 受けを苛めて翻弄する、 そんな“攻め”であるに 違いない、 って・・・・ 勝手に武市君をホモに してどうする。 私がははっと自分に 失笑すると、 武市君はキョトンと 目を丸くした。 「どしたの? 緊張なくなった?」 「うん、まあね。」 君で色々と妄想してたら 緊張がどうでもよく なりました、 とは言えずにニッコリ 笑う私。 するとそんなこととは 露知らず、武市君は 嬉しそうに、 「ん。」 と、口角をあげた。 いちいち表情が美しいな。 羨ましい限りだぞ。 私は頭をポリポリと 掻くと、大御門さんと 稲葉君の方を見た。 「二人も緊張してない? 大丈夫?」 後輩の面倒を見るのは 先輩のつとめ。 ここらで声でも かけておくか。 私の気遣いに稲葉君は 恥ずかしそうにして こちらを見る。 「・・・ちょっとだけ 緊張してます。 でも大丈夫です。」 稲葉君はこう言うと、 不安そうに生徒の方を 舞台そでから覗いていた。 さて、 一方の大御門さんは。 「・・・・別に、 大丈夫です。」 なんとまあ素っ気なく 返事をしてきて、 私と一瞬目があったかと 思うと、速攻で向こうから 反らしてきた。 おいこら、待ちなさい、 なんでそんなに態度が 悪いんだ。
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