窮地の生徒会長

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仕方ない、 これから徐々に仲良く なっていけばいいか。 きっとちょっと 照れ屋さんなんだ。 うんうん、きっと そうだ、なんかこっち 睨んでるけどきっとそうだ。 ・・・・私、 なんかしたっけ?? さっぱり心当たりのない ものを考えても仕方ない。 私はやれやれと肩を すくめると、 もう一度舞台の方を見た。 これを頑張れば 耽美でエロスなBL画集、 耽美でエロスなBL画集。 全校生徒の前での 演説なんて おちゃのこさいさい、 私ならできる! 『それではこれより 新生徒会発足の集会を 始めたいと思います。 新生徒会四役の皆さんは 舞台にご登場下さい。』 放送委員のアナウンスで 私たちは明るい舞台に 進み出た。 皆からの羨望の眼差し、 教員の監視の目、 全てが、私たちに 注がれる。 私はマイクを握ると、 すっと、息を吸った。 昨日の夜中、 呪いのように小声で ブツブツブツブツブツブツ ブツブツブツブツブツブツ 練習した演説、 みんな聞くがいい! 『こんにちは、 生徒会長に就任しました 日高 凛です。 この度は私たちのために お集まりいただき、 ありがとうございます。 さて、高校の3年間は 非常に貴重な時間です。 そんな皆さんの3年間を より良いものに出来るように 私は全力を尽くしたいと 思っています。 そして、 この学校で良かったと 皆さんが思えるような 運営を――・・・』 ―――――――――――――― ―――――――――――― ――――――――― 「お疲れさま、 会長さん。」 全校集会が終わって、 放課後。 生徒会四役はもう一度 顔合わせのために 生徒会室に集まった。 「いやいや、 みんなもお疲れさま。」 集会はもちろん 大成功だった。 当然だ、昨日あれほど 練習したんだから。 皆から割れんばかりの 拍手をもらい、 新生徒会は好調な 滑り出しを見せている。 私がニッコリと笑うと、 稲葉君が声をかけてきた。 「それにしても会長 すごいですね。 まったく緊張している そぶりも見せずに、 落ち着いて演説してて、 とても驚きました。」 そりゃ、昨日 鬼気迫る呪いのような 練習をしたからな。 だけど私としては 「死ぬほど練習しました」 なんて知られたくは ないわけで、 何事もないかのように 笑顔を振り撒いた。 「いやいや、 そんなことないよ。 稲葉君、これから 頑張ろうね。」 よし、完璧な対応だ。 よくわからんがきっと 完璧だ。 ふと、時計を見ると もう放課後になってから だいぶ時間が経っている。 そろそろ帰らなければ。 BL画集を買うための 準備もあるしな。 私はキリッとした表情を 作ると、皆を見渡した。 「じゃあ、 今日はここまでと いうことにしよう。 みんな、明日から 気を引き締めて、 よろしく頼む。」
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