窮地の生徒会長

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ゴクリと生唾を飲み込んで、 震える手でそのブックを 本棚から引っ張り出す。 タイトルは、 『禁断の楽園 ~もう誰も俺たちを     止められない~』 な、 なんて創造力を 掻き立てるタイトル!!! 私の妄想も止まらない!!! そして、タイトルも さることながら、 目をひくのはその美しい “絵”だ。 表紙は、うっとりとした 表情を浮かべる栗色の髪の 美青年と、妖艶な笑みを 見せるブラウンの髪色の 美青年が、リボンと桃色の 花びらの中で絡み合っている。 もちろん二人とも全裸。 大切な部分(キャッ)は うまい具合にリボンと 花びらが隠してて、 見えるか見えないかの ギリギリな感じが 堪らない!!!!!!! やばい、表紙だけでも 素晴らしいクオリティだ。 これは買いだ、 買わねばならんっ!!!! 中にはどんな絵が 詰まっているのか、 想像するだけで 胸が苦しいっっ!!! もう、あれだ、 家宝にしよう!!! 私はブックをぎゅっと 胸に抱くと、 ルンルンとレジに向かった。 生徒会長には選ばれるし、 こんな素敵な本は買えるし、 ついてる、 私ついてるぞ! さて、 ここまでくると、 賢い皆さんなら、 このあとどうなるか 察しがつくだろう。 このまま無事にブック 買えたら、この話、 ここで終了だ。 そうじゃないからここまで つらつら色んなことを 話してきたわけで。 私が踊り出す勢いで 本棚の影から出ると、 そこにはなんと 武市君がいて、 (見た目が特徴的すぎて 一発で分かった) しかもこれは漫画か 携帯小説か、 神様の悪戯か、 素敵で的確なタイミングで 私は武市君にぶつかって しまったのである。 「いって・・・・ すみません、 大丈夫ですか、ぁ、 えっ、 日高、さん・・・・?」 その上、武市君、 私が私であることに 気付いてしまったようだ。 何ゆえ、 何ゆえ気付いたあぁあ!!! 「えっ、 いや、 私、日高じゃない、です」 思わず嘘をついた。 いやこれ、 この激しくダサい格好で 日高 凛とバレるのは まずい!!! これじゃ、 「日高さんの私服の センス、ぷくくくくく」 と笑われてしまう!!! 私が後ずさりすると、 武市君は何かを拾い上げて、 ふわりと笑った。 「ううん。 日高さんだ。 これ、落ちたよ?」 そういって武市君が 差し出してきたのは、 私のだて眼鏡。 ぶつかった衝撃で マスクもずれてるし、 ああ、 顔丸分かり!!!!!!
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