窮地の生徒会長

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「「あ。」」 固まる両者。 表紙の中で空気も読まずに 裸で抱き合う美青年2人。 おっ、 あっ、 ひょっ、 「きんだんの、 らくえん? もうだれもおれたち、」 「読むなあぁあ!!!」 あろうことか、武市君、 明らかに怪しさと いかがわしさ満点の タイトルを声に出して 読み上げた。 馬鹿なのか、 この子馬鹿なのか!!! 公開処刑するな馬鹿!! 私が慌てて本を背中の 後ろに隠そうとすると、 武市君はそれを遮って ひょいっと私の手から 本を抜き取った。 「やめっ、 ちょ、 返して!!!!」 「参考書、 じゃ無さそうだね。 これ、なんの本??」 武市君、天使の微笑みを 浮かべてお訊ねになられる。 なんの本? じゃないから!!! 見て分からんのか!! 「いやっ、 ほんと違うの、 それ、表紙がちょっと 怪しいだけで、 中は超健「ゆきえーーっ!! あったよおおおおお!!」 突如として掻き消された 私の声。 さっきのおデブな 女性が発した声のようだ。 何事だと私と武市君が 彼女のいる本棚を 覗いて見てみると、 彼女はスマホで電話を かけていて、 その手に持っているのは、 ああ、 まずい、 同じ人種か・・・・!! 「ゆきえゆきえっ、 あったよあったよおおお! 蜜ヶ峯ゆら様のBL画集! ヤバイヤバイっ、 表紙から超たぎるっっ!! え、あたし!? あたしは観賞用と、 保存用と、あと予備で 3冊買う!! え、ゆきえも3冊? おっけーー!! 買っとくねーー!! やっばい、蜜ヶ峯さまの ボーイズラブは正義や!!」 おデブなガールの電話を 聞きながら、 当然、武市君は自分が 手に持っている本と、 おデブなガールが持ってる 本をしげしげと見比べて、 目をぱちくりさせる。 そして、 私の方を見た。 「蜜ヶ峯ゆら様?」 本のタイトルの下にある 著者名を指差して、 キョトンとする武市君。 終わった。 私の人生終わったわ。
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