奪われる生徒会長

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磯部君は苦笑いして 昴達を見た。 「血気盛んだね、 1年組は。」 自分だって私以上に 余裕がない状態の癖に、 いつも通りヘラへラと する磯部君。 昴はキッ!!と磯部君の 方を見た。   「磯部先輩だってもっと 抗えばよろしかったのに! なんなんですのっ、 2年の学年主任は!!! あんなの先生だなんて 認めませんわ!! 磯部先輩は生きるために バイトをしていたのに、 まるで取り合わなくてっ、 こんなの、 ひどいっ・・・・・・・」 昴は悔しそうに唇を噛む。 稲葉君も眉を潜めて 磯部君の方を見た。   「磯部先輩、 どうするんですか? 明後日の職員会議で 仮処分が処分として本当に 決定してしまったら・・・」 その先にあるのは、 退学。 磯部君はハハ、と 乾いた笑い声をあげた。 「退学、かな。 これは、 なりふり構って られないかもね。」 磯部君は、 顔は笑ってるけど、 目が笑ってない。 漆のような漆黒の瞳は 何故だか妖艶に 揺らいでいる。 「磯部君?」 私が名前を呼ぶと、 磯部君は、 ヘラへラ笑いも捨てて、 普段私たちには向けない 真顔で休憩室を出ていった。 磯部君・・・・・・。 「磯部先輩、 どうするんでしょう・・・」 稲葉君は心配そうに 磯部君が出ていった 扉を見つめた。 私は、昴と稲葉君を 交互に見る。 「二人とも。 お願いがあるんだ。」 今の私は、 腐女子ってバレてて、 磯部君を助けるための 影響力もなければ、 知恵も絞り出せない。 だから、言うんだ。 「私も努力する、 だけど、 私じゃどうしてもうまく いかないかもしれない。 だから、 お願い、磯部君が 退学にならずにすむ ように、何か、 手段を探してっ・・・ こんなこと頼んで、 ごめんね・・・・。」 頭を勢いよく下げると、 昴が慌てて私の手を 握った。 「そんな、お姉さま、 顔をあげてっ・・・・」 ゆっくりと顔をあげると、 昴も、稲葉君も悲痛な 表情だ。 稲葉君の眼鏡の奥の 瞳が潤む。 「でも、 日高先輩は どうするんですか? 日高先輩のことだって なんとかしないと・・・」 ―――――――私、か。
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