奪われる生徒会長

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私、は。 「私のことはいいから。 まずは、磯部君を。」 この言葉を聞いた瞬間、 昴が何か言いたげに 口を開いた。 だけど、すぐに ぐっと口を閉じて。 「お姉さまは、 それでよろしいのですか?」 「・・・大丈夫。 磯部君は、学校を やめるかやめないかの 危機だからね。 私はただ生徒会長を やめるかやめないかって だけで、話のレベルが 全然違うよ。 だから、磯部君を。」 私がニコッと笑うと、 昴と稲葉君が顔を見合わせた。 そして稲葉君がコソコソと 昴に耳打ちをする。 昴はそれを聞くと、 さっき外した自分のバッチと 稲葉君のバッチを手に取った。 「・・・では、これを。 お姉さまに、 わたくしと稲葉君の バッチを預けます。 また、一緒に生徒会を できるようになったら、 返してください。 わたくしたちは、 まずは磯部先輩のことを 何とかするために尽力 いたしますが、 お姉さまのことも 諦めません。」 昴の手の中で光る、 2つの金色のバッチ。 ・・・・・手に取るか、 迷った。 また、生徒会活動を みんなと一緒にできる日が 『本当に』くるのか? 「日高先輩。」 稲葉君が、強く、 私の名前を呼ぶ。 迷わないで、 まるでそう言うかのように。 「・・・・わかった。 預かっておくね。」 昴達が諦めてないのに、 私が弱気になって どうするの。 私は、二人のバッチを ギュッと握った。 辛いよ、 きついよ、 こんな経験、 できることなら したくないよ。 だけど、逃げられないから。 真正面からぶつかって いくしかない。 ************* 教室に戻ると、 みんな私の胸元を見て ギョッとした。 あるはずのネクタイと バッチがない。 そりゃビックリだろう。 さあ、考えろ。 私にできること。 磯部君を退学させない ためにできること。 私は自分の席について ぐっと唇を噛む。 たとえば、 先生達をひとりひとり 説き伏せる? 誠意と、磯部君の大変さを 真剣に伝えれば・・・ うまくいくかなんて、 わからない。 でも、やるしかないんだ。
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