奪われる生徒会長

13/14
前へ
/590ページ
次へ
「あっ、 はい・・・・・」 説き伏せるどころか、 大人しくしろと 言われてしまった。 先生はニッコリと口角を 上げると、お尻を プリンプリン振りながら 職員室に入ってしまった。 「っ・・・・・・」 ぐっと、唇を噛む。 結局、私にできる ことなんてないのか。 『真っ正面から説き伏せる なんて無理よ。』 先生の言葉が、 ドンッとのしかかる。 そういえば武市君にも 言われてたっけ。 日高さんは正攻法で 攻めすぎるって。 「だって、 それ以外どうしていいか 分かんないよっ・・・・」 もっと、知恵が働く 子になりたかった。 もっと、人が思い付かない ようなことが思い付く 子になりたかった。 もっと、ズルいことが できる子になりたかった。 もっと、狡猾に賢く 生きていける子に なりたかった。 今の私じゃ、 磯部君を助けられない。 明日には職員会議が あるのに。 どうしよう・・・・・ ************ 昼休み。 私は、武市君のところに 行ってみることにした。 ちょっとだけ、武市君の 知恵を借りたいんだ。 武市君のクラスに行くまで いろんな人が私をチラチラ。 挙げ句の果てには何か こそこそ話してる人まで。 私はその視線から 逃げるように武市君の ところへ急いだ。 「武市君いますかー・・・」 教室を覗きこむと、 武市君おらず。 あちゃー・・・・・・ 「武市君探してるの?」 私がドアの前で右往左往 していると、武市君の クラスの女の子がひとり 声をかけてきた。 おおっ! 「うん、そうなんだ。 武市君探してるんだよ。」 私が答えると、女の子は 困ったように眉尻を下げる。 「そっか。 武市君、今日は お休み時間になると どっかに行っちゃって、 全然クラスにいないの。 伝言なら伝えとくよ?」 「あ、いやいや、 伝言があるわけじゃ ないんだ・・・・」 そっか、 いないのか・・・・・ 武市君に会えなくて、 気持ちが急速に萎む。 ・・・・・会いたいな。 「うん、ありがとう。 大丈夫だから。」 いないと分かれば、 いつまでもここにいても 仕方がない。 私は、ペコッと頭を 下げてその場を 立ち去ろうとした。 すると。 「日高さん!」 呼び止められた、私。 振り返ると、女の子が じっと私を見ていた。 「あの、 大変だと思うけどっ、 頑張ってね!!」 ・・・・・・! ドクンと、 体中がざわめく。 女の子は、少し 恥ずかしそうに はにかむと、 タタッと教室の中に 戻っていった。
/590ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加