完璧な生徒会長

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「日高先輩っ! おめでとうございます!」 私がそそくさと校舎を 出ようとしていると、 一人の男子生徒が声を かけてきた。 急いでいるとは言え、 邪険に扱うことは出来ない。 私は微笑を浮かべて、 男子学生の方を振り返る。 「ありがとう。 期待に答えられるように 頑張るよ。」 さあ、これでよし、 帰ろう、なんて思って また歩こうとすると、 男子学生は私の制服の 裾をキュッと引っ張った。 「あのっ、 俺みたいなのが、 こんな風に思うの、 恐れ多いっていうか、 身の程知らずなのは 分かってます。 だけど、俺、 日高先輩のこと、 尊敬してて、 その、 女性としても、 すごく、 魅力的って、いうか・・・」 こう言って、 モジモジする男子生徒。 私が黙ってみてると、 男子生徒は意を決したらしく キリッとこっちを見てきた。 「好きです、 付き合って下さい。」 「・・・・ごめんね、 お付き合いは出来ない。」 期待を持たすような ことを言ってはならない。 私の返事に相手の男子生徒は ひどく落胆した様子だった。 だが、中途半端な言葉は 逆にこの人を苦しめるだろう。 それに。 「私は今、恋愛には 興味がないんだ。 生徒会長になったし、 やるべきことが色々 あるからね。」 そう。 私は恋愛よりも大切な ものがあるんだ。 今はとても恋愛なんて 気分ではない。 私がこう言うと、 男子生徒は、 「日高先輩らしいっす・・・ わかりました! 失礼します!」 と、私の前から 立ち去っていった。 日高先輩らしい、 か・・・・・・・・。 私はフッと小さく笑うと 家路を急いだ。 早く、 早く帰らなくては。
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