完璧な生徒会長

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急ぎはするけれど、 だからと言って焦って みっともないところを 見せてはいけない。 私はみんなの憧れの 対象なのだから。 私はいつでもみんなの 理想の私でなければ ならない。 「さようなら、 日高さん。」 「明日の全校集会、 楽しみにしてますね。」 「また明日!」 「みんな、ありがとう、 また明日。」 私は、一人一人に 笑顔を振り撒く。 こうして、 カツカツと学校指定の 茶色いローファーを 鳴らしながら、 私は自分の家に帰った。 さあ、 急がなければ。 ―――――――――― ―――――――――――――― 「ただいま。」 「お帰りなさい、 凛ちゃん。」 家に戻ると、母さんが 夕食の支度をしていた。 私はきっちり手を洗って うがいをし、制服を脱いで ハンガーにかけると、 そそくさと自分の部屋に入る。 夕食が出来るまで、 推定40分。 これだけあれば 時間は十分だ。 カチリ、 と、扉の鍵を閉めると、 ここからが、 私の『用事』の始まり。 私は机の下の本棚から 一冊の本を取り出した。 焦るな、 時間は十分あるんだ。 高鳴る胸の鼓動を 確かに感じながら、 私はその本を ゆっくりと開く。 ああっ、 どんなにこの時を 心待ちにしたことか・・・! 私は、はやる気持ちを 抑えて、その“本”に 視線を落とした。
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