完璧な生徒会長

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私がボーイズなラブと 運命的な出会いを 果たしたのは、 小学校6年生のとき。 当時、うちの家には 高校2年の姉がいて、 (今は就職して家を出ました) あるとき私は姉の持ってる 漫画を無断で借りようと、 姉の部屋に忍び込んだ。 姉の漫画はなかなか 刺激的なものが多くて、 まだ12歳だった私には 実に興味深いというか、 中毒性があるというか、 つまりはがっつり 興味津々だったのである。 その時は、まだ男同士の キャッキャウフフの良さを 知らなかった私。 本棚を漁っていると、 本棚の裏から一冊の漫画が 出てきた。 それは茶色いブックカバーが かけられた、謎の本。 なんだこれ、と本を 開いた瞬間、 脳みそをぶち抜かれたような 衝撃が走った。 男が男とチュウしてる!!? 驚きすぎて、バチン!!と 本を閉じた。 見てはいけないものを 見てしまった感覚に、 心臓が激しく脈打つ。 だけど、罪悪感と共に 次にやって来たのは、 「もっとよく見たい」 という衝動。 もう、私はこの時点で 腐女子な人生を 歩みだしていたのだろう。 そろーっとページを 開くと、 そこはめくるめく 禁断の世界が広がっていて、 「ああっ、ダメよっ、 こんなの見ちゃだめっ、 引き返すのよっ、 うおっ、 やべ、何これ凄い」 と、こんな感じで 今に至るわけである。 姉ちゃんありがとう。 さて、 ボーイズなラブに はまって、一年たった頃。 一条学園中等部のハイソで アッパークラスのお家の ご出身の方々が何やら 一生懸命話しているのを 見て、私はなにも考えずに、 「何の話?」 と首を突っ込んだ。 当時から持ち前の コミュ力と不思議な カリスマ性で皆に一目 置かれていた私に、 (自分でいうなと言う 突っ込みは要らない) アッパーな皆さまは 嬉々として声をかける。 「日高さん! 日高さんはBLって 知ってまして?」 「えっ、あ、ああ、 単語としては知ってる。」 知ってるどころか 大好物ですが。 だけど、空気的に 大好物だなんて言えない。 私はそういうキャラじゃ ないんだ。 もっとカッコいい たち位置なんだから。 すると、アッパーさん達は 「まあ、普通その程度 ですよねぇ。」 と、言う。 「なんだか最近は 腐女子だなんて言葉も ありますけど、 ようは『オタク』でしょ? なんで堂々と してられるのかしら。 オタクだなんて 恥ずかしいわよね、普通。」 グサッと 心臓に言葉が突き刺さった。 あ、 腐女子ってこういう 扱いな感じですか? 私、ハハハと、 乾いた笑い声をあげる。 すると、回りにいた 男子たちも首を 突っ込んできた。 「腐女子って日常生活でも そういうこと考えてんのかな。 例えばさ、B組のアイツと C組のアイツであんなことや こんなことを想像してグヘヘ、 みたいな。」 「それは無理。」 「それはキショイ。」 「それ怖いな。」 おいふざけるな、 カップリングは 美しい男のみが対象に なるんだ、 無差別にお前達みたいな 深海魚系な顔面の男で カップリングするわけ ないだろ、 という言葉はぐっと 飲み込んだ。
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