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夕食前、部屋着に着替えてきた主人はいつも通りに席に着き、いただきますと告げたあと、頰を綻ばせた。
食事を終え、シンクで慎重に洗い物をしていたら、思い悩むような顔の主人がふと視界に入った。無性な心細さが膨らんで、わたしは手にしていたお皿を割ってしまった。
シンクの中ではなく、足元に破片が散っている。飛んできた主人はわたしに動かないでと言って、慎重に割れた皿の破片を拾っていった。そうしてまた、動いちゃだめだよと言った。
掃除機をかけて全て片付け終わったあと、わたしはぐっと彼に抱きしめられた。そうして、結局こんなことしかしてあげられないなんてねと言った。それが彼の浮かない顔の理由だった。そんなことないとわたしは言った。わたしはいつだって救われている。
主人はわたしの見えないところで、きっとこんな表情をいつも浮かべて、必死に考えてくれているのだろう。いつも変わらない主人に悩みを与えつづけていたなんて。わたしの願いはわたしのわがままでしかない。悔しくて、思わず涙をこぼした。
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