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ダイヤとハロウィン8
「服……汚しちまった」
俺とフジマと、二人が出した物で湿ったスカートを情けなく見下ろす。
フジマが汗みずくの頬に口付け、愛情こめた手付きでスカートの裾をおろしていく。
「巧メイドにご奉仕してもらえて、人生最高のハロウィンになった」
「一回きりだかんな。コスプレはこりごりだ」
「結構ノッてたじゃないか」
「合わせてやったんだよ」
「腰の動きに合わせてミニスカがだんだんはだけてくの、そそったよ」
「ムッツリスケベ。タルト喉に詰まらせて死ね」
抱き合って互いの鼓動を感じていると、床に倒れた瓶に目がとまる。ふと思い付いて手をのばし、紫色のかたまりを含む。
「ふひま」
「ん?」
こっちを向いた拍子に顔を手挟み、スミレの花の砂糖漬けを口移しで食わせる。
「ん……」
舌と舌が絡み合い、二人の温度で砂糖が溶けてスミレの花の爽やかな風味が広がる。
フジマは後ろ手を付いてされるがまま、俺は覚えたてのぶきっちょな舌遣いでスミレの花を転がして、舌と舌とを行ったり来たりさせる。
フジマの咽喉が動いたのを見計らって名残惜しげに唇をはなす。
「お裾分け」
「……なんでかな、さっきより甘く感じる」
「言ってろ」
人さし指で唇をなぞったフジマがそう独りごるもんで、勢いやっちまったあとになって恥ずかしさがぶり返し、瓶のふたを無駄に力一杯締め直す。
俺の照れ隠しを見抜いたのか、フジマが遠慮がちにスカートの端を引っ張る。
「んだよまだ何か」
「大好きだよ」
いい加減うざったくなって邪険に扱えば、不意打ちで囁かれて心臓が蹴っ躓く。
スカートを摘まむ手を振りほどく気が失せるほどその笑顔は満ち足りていて、すでにして腹一杯だった俺はお代わりを頼むガッツもなく、振り返りざまフジマの額を弾く。
「お互いさまだろ」
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