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 八ヶ代がこの一日でクラスの皆にいい感情を持たれなくなったというのは、5、6時限目にもなると明らかだった。  仕方ないだろう。初対面で真名川と関原に喧嘩を売ったことも問題だが、あれからどの教師もコイツに一切注意などしなかった。担任の片桐さえも。まるで腫れ物を扱うようなその態度は、他のクラスメイトから見れば贔屓(ひいき)されているようにも見えるだろう。  本人の態度も、周囲の人間のコイツへの対応も最悪だ。だから、こうなるのは仕方がないとしか言いようがない。  帰りのホームルームが終わり、次々と教室を出ていくクラスメイトたち。帰り際、恨めしげに八ヶ代を睨みつける奴は少なくはなかった。睨みつけられている当の本人は何も気に留めていないようだったが。  あらかた人はいなくなった。……いよいよ問題の放課後だ。  とりあえず校庭に出るんだろう。そう思ってオレが声をかけようとする前に、八ヶ代は荷物を抱えてスタスタと歩き始めた。思わずオレは呼び止めてしまう。 「八ヶ代! お前校庭裏の場所わかるのかよ」 「外に出ればわかるだろう、そんなもの。ただ人気のない場所で話がしたいだけだ」  ――人気のない場所で、話。  あの時の――未来予知に興味があるのか、と輝いた瞳を信じるなら、コイツはマジにその話をするつもりなんだろうか。そして、そういった話を誰も信じていないということすらも理解しているのだろうか……。  そうこう考えているうちに、八ヶ代はまた歩き始める。オレも横に並ぶように歩き出すが、コイツ……早足な上に、他人に歩調を合わせるという概念がないらしい。  八ヶ代理が徹底的に他人に合わせることにできない人間であるということを再確認しながら、オレたちは校庭へと向かう。
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