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片桐が教室を出た途端、クラス中がざわめく。椅子を引く音、音を立てて立ち上がるクラスメイト。
そうだ、今から八ヶ代は今から地獄の質問攻めに遭うはずだ。さっきまでの態度のこともある、確実に穏便には済まないだろう、とこの時点で予測はつく。
まず八ヶ代に最初に声をかけることができたのはこのクラスの委員長的存在の女子、真名川だ。簡単な自己紹介と、RINEを交換しようというそれだけの挨拶。
「人見知りって先生言ってたけどホント? でも大丈夫、みんな優しいから! 世良もわかってくれるだろうし、ね? 仲良くしよう?」
八ヶ代はそれに何も答えなかった。強いて言うなら、一際大きなため息が彼女への返答だったのかもしれないが。
勇気を出して話しかけてきた相手をふいにするその蛮行に、真名川始め挨拶や質問をしようとしていた一同が凍りつく。その時はたぶん、俺も凍りついていた。
「八ヶ代くん……」
恐る恐る声をかけ直す真名川。けれど八ヶ代はまたため息をついた。
「――――うるさい」
凍りついた空気を、更に凍てつかせるような鋭い言葉。横にいるオレに感じ取れた怒気を、今話しかけている真名川が感じ取れなかったわけがない。
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