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「転校生さあ……そういう物言いって良くねぇよなあ」
八ヶ代のそれより怒気を含んだ男子生徒の声を聞いて、オレは思わずハッとする。関原――とても気が強くて面倒くさい、真正面から相手にしたくないクラスメイトナンバーワンの男子、関原。
「入ってきた時からずっと思ってたけど、なんでそんな態度デカイんだよ? 世良の挨拶も無視したよな? 何様のつもりなんだよ」
ああそれ、オレも一言一句同じことを言いたかった――じゃない、このままだと暴力沙汰になりかねない! 巻き込まれる前に逃げようと考えたが、話の内容にオレががっつり組み込まれている上に、クラス中の視線がこちらに向いている。……とてもじゃないが、ここを動ける雰囲気じゃない。
ぐらり、歪む視界。意識ははっきりしているのに、それでも歪む。
ぼやけた映像に、また何かが映る。黒板の端に書かれた、今日の日付。窓から差し込む、まだそう高い位置にない陽の光。
八ヶ代に掴みかかる関原。その瞬間に八ヶ代は髪をかき上げるように肘を突き出し、その肘で殴りかかってきた関原の腕を止める。そしてもう片方の腕で、がら空きになった関原の顎を遠慮なく殴り飛ばす。
そんなたった数秒の映像が、オレの脳裏を奔っていった。
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