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 今まで、オレが何をしたって一度視た未来が変わることはなかった。今よりずっと気合を入れて事態を動かそうとしたことだってあるけれど、それが叶ったことなどない。  なのにこんな。こんな、よくわからない転入生のために動いた時には変わるなんて……。  その転入生は、オレに礼など言うつもりもないらしい。オレも、周りのことなど全く気にせず、まだ教科書の入っていない鞄をゴソゴソと探り出す。  そこから取り出した本のタイトルを見て、オレは自分の目を疑った。 『未来予知のルール』  心拍数が跳ね上がったのがわかる。どうして? なんでお前がそんなものを見てる? 偶然なのか?  ……疑問を脳内で駆け巡らせるオレの視線に気づいた八ヶ代が、目を真っ直ぐに見つめ返してきた。 「世良翔太。お前、未来予知に興味があるのか」  本のタイトルを見せびらかしながら言う八ヶ代の目は、不思議と息を吹き返していたようだった。
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