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第一話…ーストリートチルドレンー
肌寒い秋の空、ノアはいつものように路地裏で目が覚める。隣に目を向けると知らない少女が寝ていた。
(こんな路上に女の子まで・・・)
ノアは地べたから立ちあがると井戸のある路地へ向かい体を流すと仕事にいくのだった。
仕事が終わり井戸の冷たい水で汚れを落とす。あたりはもう暗い。今日は稼ぎがよくパンを買うことができた。いつもの場所へ帰っていく。
帰っていくといってもノアの住家はこの路地のひとけのないただの裏通りだ。ここに自分の持っているずたぶくろをしいて着ていた上着をかけて寝る。
パンをかじろうとしたとき、横目には朝いた少女がまた横になっていた。同じ路上暮らしの子供はあちこちにいるが少女は珍しかった。
「君、女の子がこんなところで寝ていたら危ないよ。家は?」
少女はこちらをチラっと見たあと、そっぽを向く。
「おまえも同じだろ。それに僕は女の子じゃないぜ」
ノアは「えっ」とびっくりしてもう一度顔を除きこんだ。たしかに顔は綺麗だが声は声変わりし始めていた。
「なんだ、君男の子だったのか」
「男だと何か変わるのかい?」
流し目で微笑むその少年はノアの持っているパンが目に映り表情を変えた。しかし何事もなかったようにまたそっぽを向いて横になった。
「君、名前は?お腹すいてるだろ、これしかなくて悪いけど、半分こしよう」
「いらないよ」
「じゃあここに置いておくよ。僕は食べてすぐ寝るから」
ノアはそう言うと少年の近くに半分にちぎったパンを置いた。少年は動かなかった。ノアは自分のぶんを食べ終わると横になって眠りについた。
朝は眩しい太陽が起こしてくれる。ノアは昨夜のことを思い出して横に彼がいるか確認した。少年はいなくなっていた。パンもなくなっていた。
ノアは立ち上がると仕事へ向かった。
一日の終わりの街灯が照らす夜の街は美しい。大人がテラスの席で酒を飲み交わして楽しそうにしている。
ノアはくたくただったが今日は仕事で失敗をして食べ物を買うお金がなかった。
レンガの崩れそうな建物の前で母親がお腹のすいた小さい子供をあやしていた。帰り道のこの通りではよく見る光景だ。
(あんな小さな子まで耐えてるんだ。僕もこのくらい・・・)
寝てしまえば忘れる。そう思ったが、空腹だけでなく熱も襲ってきた。
(おでこが熱いな)
早く横になろう。いつもの人通りの少ない路地裏へと向かう。
例の少年は今日もそこにいた。
「なんだおまえ、フラフラじゃないか。他人になけなしの飯を分けるからさ」
微笑しながらノアの顔を見た少年は目を見開いた。ノアは空腹と疲れで真っ青になっていて、さらに熱もひどく意識が朦朧としていた。
「ああ、君か、最近寒くなってきたからかな。どうやら風邪を引きやすいみたいだ」
ノアはこの一言で喋るのも精一杯だった。そしてそのままバタッと倒れてしまった。
少年はゆっくりと近づくとノアの額を触った。かなりの熱だった。
少年は少し考えこむとどこかへ走っていった。ノアはそのまま眠った。
どのくらい経ったか知らない。辺りはまだ暗かった。誰かの声で目が覚める。
「おい、起きるんだ。これを食べろよ」
あの少年が見下ろしていた。目の前にパンとチーズがある。額にはぬらした布がのっていて、上着が二枚重ねでかかっていた。
「こんなに、どうしたの?」
ノアは不思議でならなかった。
「別に。買ってきたのさ」
「僕のために?ありがとう。君も一緒に食べよう」
「いらない。もうさっき食べたんだ」
「そう?じゃ、いただくよ」
頭の回らないノアはむしゃむしゃかじりついて、食事が終わるとまた倒れるように眠りについた。
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