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君と過ごした一年
冬、私とソウジは初めて雪だるまを作った。
転がして作った重たい頭を胴体に乗せるのには骨が折れたが、真っ新な一面の白に佇む雪だるまが何だか誇らしそうに見えた。
春、私とソウジは山間に咲き誇る山桜を眺めてお花見をした。
ソウジが持ってきた団子が美味しくて、結局桜を見ていたのは最初だけだった。食べ終わった後のほうじ茶の温かさが胸を満たした。
夏、私とソウジはホタルを捕まえた。
短い命だからと捕まえた後に一斉に逃して、光の行く末を一緒に眺めた。散らばっていく光が幻想的でいつまでも眺めていたくなった。
秋、私とソウジはかくれんぼや鬼ごっこをして遊んだ。
夕暮れが迫ると、日が沈むまで一緒に眺めて、沈んだところで帰宅する日々を過ごした。沈む夕日が反射するソウジの瞳の美しさに見惚れ、まだ沈まないでほしいという思いが浮かんでは消えていった。
そうして、いつしかソウジと一緒に居るのが当たり前のように感じていた。
「明日は何して遊ぶ、ソウジ」
「明日はけんけんぱでもしようか、ミヅチ」
「それなら、設計は任せて」
「ははは、どんなに難しいのでも達成してみせるよ」
一年、人にとっては長いけれど、神にとってはあまりにも短い期間。
それなのに明日、というもっと短い期間をとても長く感じた。早く明日が来てほしいと願ったことは一度や二度のことではなかった。
どうして神様業は人と友達になることを推奨していないのだろう。
こんなに幸せな気持ちになるのなら、もっと早く人の友達が欲しかった。
そう思っていた時だった。
ソウジが申し訳なさそうにこう言ったのだった。
「ごめん、ミヅチ、今日は母の具合が悪いみたいだから、もう帰るね」
そう、と頷く私に流れる彼の祈りに、僅かな変化の兆しがあったことに私は気づかなかったふりをした。
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