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君との逢瀬
日が傾いて西の山間に暮れていく。
参道に描かれる君の影が大きくなってやがて闇に紛れていく。
「そろそろ僕は帰るね、ミヅチ」
「そう、私も帰るわ、ソウジ」
また明日、そう言って私達は背を向けて歩んでいく。
なんとなく寂しくなって振り返ると、鳥居の前で君が大きく手を振ってくれているのに気づいた。
お返しにと、気恥ずかしい私は小さめに振り返す。
遠くて見えない君の微笑みが近くに感じられたような気がした。
幸せとはきっと、このような日々を言うのだろう。
私は願う。このささやかな幸せが永遠に続きますようにと。
そんなわけがないことも、願う先が無いことも知りながら。
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