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「幽霊なんていない幽霊なんていない幽霊なんていない…」
恐怖が天元突破したのかそんなことしか呟かなくなった。もう一度言うけどテメェの方がホラーだよ。こえぇわ
札も貼ったことだしこれ以上長居することもないので帰るかと言った時
境内に風が強く吹きついて葉が舞い上がった。
「―――っ!?」
「うわっ!?」
腕で顔を庇い、下ろした時それはそこに立っていた。
「お前、は―――」
「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「「……」」
どこまでも空気が読めねぇ野郎だな。
チャラ男はそれを見た瞬間、盛大な悲鳴を響かせて今まで来た道を走っていった。まぁ、先に帰れや。ウザいし清々すると思う。
改めてそいつに向き合った。ちょっと気まずそうな、微妙な表情をしていた。あの馬鹿がごめんな?
「角、尾、鱗……そうか、お前はここに祀られている神霊だな?」
「是」
それは人の形をしていたが人ではなかった。長い黒髪を一つにまとめ、美しい紫の眼を持っていた。頭部には細く長い一対の角があり、衣装で見えずらいが腰には滑らかな尾が、肌には月光の光を反射して輝く鱗があった。
それから一つ分かったことがある。
「そこから見ると、神龍ってことか」
「是」
神龍、龍でありながら神である者。人型になるには多大な力を持っていなければならない。神と名乗れるぐらいではないと。
何故この土地に、と思うかもしれないが前に神宮寺を調べた時にわかったことがあった。
今は、神宮寺と名乗っていたが昔、遠い昔では神龍寺と名乗っていたことだ。その名から察することが出来るように起源はこの神霊本人だろうことがわかる。
どうしてこの土地を持っていたのか、別荘として最適だからではない。反対なのだ、神龍がいたからこそなのだ。
祀られているところは神社だがなぜ苗字には寺となっているんだという話は知らん。だが、そういうことなんだろう。
「なぜ、表に出てきた?」
その切れ長の目を更に細める。その威圧を強める。
「…そなたに、ひとつ」
「……なんだ」
「なぜ、そなたはそこにいるのだ?」
「…………」
「――――――」
ふっ、と息をもらしてそいつは嗤った。まるで愚者を見たかのように。腹を抱え、涙を浮かべ
今ではその威圧感は無かった。
不意にそれは収まる。目じりの涙を取り、顔を引き締め
「ならば突き通してみせよ。そなたは我から見たらまだ幼子、本来の道から逃れようとする終焉よ。それが何を犠牲にしようとも、――の我が儘ならな」
そう言ってそいつは消えた。もとからいなかったのように
それを見届けた俺はもと来た道を戻る。
道の途中で馬鹿はいた。走っていて我に返ったのだろう。非常におびえて木の根元で震えていた。
俺はチャラ男に近づいて背中をポンと叩く
「ひぎゃ!!??」
「帰ろっかぁ~」
「つ、つっつ~ん!!ぶへっ」
「触んな」
あ、気持ち悪すぎてついつい鞭で叩き落としてしまった。まあ、チャラ男だしいいよな。
「良くなぁい!!ぐへっ」
煩い
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