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ぱたん
「……」
「突き通してみせよ…か、簡単に言ってくれるな」
先日邂逅した神龍。その紫の瞳は全てを見ているかのような鋭さがあった。事実、どこまで気づかれたのか若輩の身としてはわからない。理解できない。
知られた、見られた、理解された
それでもなお、見逃された
その事に身の内が怒り狂う炎に焦がされてしまいそうで
頭を冷やした。ここで怒りを覚えようと、何も変わらない。変わってはいけない。
駄目だな、あちら側に精神が寄っている。人ならざる者に会ったことで誘発され、引き出されてしまったか。その上でいつもの思考なら、良かったと判断するだろう。何事もない方が嬉しいのだから。
だから、あちら側の考えはいらない。と言っても、全てを消し去ることは出来ない、常についてまわるものだが
そこで一旦思考を中断してコーヒーを注ぐ。椅子に座ってナイフを手に取って腕に突きつけた。あふれ出す血液、それは白く染まっていた。身体の中を力が循環してしまったからだろう。これは…しばらく落ち着かないと無理か。
力を中に押しとどめるのを潔く諦め、白く染まったそれをそこらのタオルでふき取る。
「ごふっ…くっ、けぼっ……」
口から溢れ、顎を伝って零れる白。力が枯渇気味なのに引き出してしまった代償だろう。口を手で押さえてしばらく咳き込んだ。
「…ハッ…はぁ……まだ大丈夫、だいじょうぶだ……」
力のもととなるモノを吸収しなければ長くはもたないだろう。そういう存在なのだから、自分の存在意義に背き生きている矛盾も安くないってことだ。
今回はつい引き出してしまったが、気をつけよう。だけど、本当に自分の願いをそれまでに叶えられるだろうか。
「ハハッ……何弱気になってんだよ…」
無理だ。そもそも自分の願いが何かもわかっていない。言葉とは裏腹にそんな思考が頭をよぎる。
「なんのために、俺は、ここで……」
『―――』
「わかってんだよんなもん!!!」
『――――!』
「うるせぇッ!!!」
『――、――――!!?』
「黙レ、黙れ、黙れぇっ!!!」
テーブルの上に置いてある物をすべて払い落し、両手で顔を覆う。カップに残っていたコーヒーが床を濡らし、広がっていく。
「ぁぁあ、あああアあ……」
浸食が速い、つい最近分けたばかりだというのに。もしかしてある種の生存本能だと言うのか、だったらもうどうしようもない。
ならいい、それならば開き直って出来損ないの生を愉しもうではないか。
未だに文字をなさない声を垂れ流しながら決意を固めた。
「……キャはッ」
願いを、自分でもわからない願いを叶えるために――
吐血したところです。学校の授業中に描きました。あ、一応板書して、教師の話は聞いています。
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