のぞく、のぞく。

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 ふうう、とすっきりしてゴミ箱にティッシュをぽいぽいと投げ込みながら、俺は椅子の上でのびをした。最近また太ってしまったのか、ベルトがきつくてたまらない。誰も管理人室に来ないのをいいことに、ベルトをだらんと緩めたまま過ごすことが増えてしまった。一番外側の穴で通してもきついのだからしょうがない。ベルトの上に乗っかる腹の肉も、一段と肥え太ってしまったような気がしている。脂っこい弁当の食べ過ぎだろうか。  まあいくら太ろうがなんだろうが、どうせ自分のような醜い中高年に今更嫁など来るはずもないのだ。液晶の中の“嫁”と妄想セックスができれば十分なのである。美女の恥ずかしい姿をいつでも好きなだけ観察してオカズにできる。それが、俺がこの仕事をしている一番の理由なのだった。 ――カメラの存在は絶対バラすなって話だが。……バラしたらそれはそれで、面白いことになるんだろうなあ。  何も知らない梨絵は、入浴剤をたっぷり入れた風呂の中で足を伸ばして寛いでいる。すべすべした太股をべろべろと舐めてやったら、あの涼しい顔がどれほど嫌悪に歪むことか。ああ、そのもちもちとした美味しそうな全身に好きなだけかじりつてやりたい。あの淫乱女は最初だけ痛がる素振りをして、しかしすぐにあられもない声を上げはじめるに決まっているのである。  盗撮してやった裸の映像をチラつかせて、ヤらせろよと迫れば。むしろ大喜びで足を開くのではなかろうか。このテの強姦願望がありそうな女ならきっとそうなるはずだ。盗撮をバラしても、よそに言い触らすようなことなどきっとしないと思うのだが。 「きっと仕事がない日は、そのカラダを冷ますためにやべぇ店にでも出入りしてんだろ。そんなとこ行くくらいなら俺が慰めてやるってのによぉ」  ああ、楽しみでたまらない。  今日までのオカズは殆ど梨絵一人だったが、もうすぐこのアパートには新しい住人が増えることがわかっているのだ。観察がますます楽しくなることだろう。  俺は太腿をこすりつけるようにしつつ、近くの棚からファイルを取り出した。べろべろと指を撫でてページをめくると、そこから一枚の履歴書のような紙が挟まったページが現れる。  それは、ある一人の女のプロフィール。このアパートに越してくるにあたり預かった個人情報というやつだった。写真の中ではセミロングのサラサラ黒髪の少女が、にこりともせずに佇んでいた。幼く見えるがこれでも女子大生だ。理想的な大和撫子然とした美少女である。  名前は、一倉満理砂(いちくらまりさ)と言う。
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