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〜唯人 side〜
「このままじゃ、帰れない……?わぁぁぁぁぁ!!やだ!無理!家帰る!帰り方わかんないけど帰るーー!!」
大声で叫んでしまうと、ガラの悪そうなガタイの大きい男の人がチッと舌打ちして「うるせェなあ!」と叫びながらそこら辺にあった大きな空き缶を足で蹴り飛ばした。
「ひぁっ!?ご、ごめ……っ!」
「あぁ?声ちっせぇなー!さっきまで出てたデっけぇ声はどこ行きやがったんだ、アァん!?」
「あ、あ、えっと……ごめんなさ……っ」
「何だァ?聞こえねぇな!?」
「ひっ!だ、だから……!」
怖さのせいか、握りこぶしに力が入る。
ブルブル震えて、今すぐここから逃げ出したい。
「だからァ?」
「だから……っ、ごめんなさいって、さっきから言ってるじゃないですかぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「グファ!!!!」
男の人の下顎に、精一杯力を込めた拳が突き刺さる。
その人は声を上げて後ろに倒れた。
あ、やりすぎ、ちゃったかも……っ!
「あの、大丈夫ですか?……あ」
男の人の目は回っていて、軽く脳震盪を起こしていた。
この程度なら、大丈夫だ。
この技……ってもいいのかな?は、護身術。
今回俺が引き取られた先で教えこまれたもの。
辺りが、静かで怖い。
「も、もう帰る!家帰るー!家どこ!出口どこ~!」
周りにいた怖そうな男の人たちは、ビクリと体をふるわせて目を見合わせる。
その男の人たちはこくりと頷き合うと、ゾロゾロと俺の周りを囲んだ。
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