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あいそがつきました
「さて、そろそろ帰りましょうか」
専務に就任したばかりということで、お知らせや挨拶廻りなどの調整、社内についての報告に追われて声を掛けられるまで集中していて時間に気づかなかった。
今までは、補佐をする対象は複数の人間で頼まれたことを忠実にこなせばよかった。
しかし、秘書として専務を補佐をするのなら、自分の作業以上に専務の時間の管理をしなくてはいけないのに声を掛けられるまで時間に気づかなかったとか、これは良くない仕事としては失敗だ。
しばらくはアラームを使った方がいいかもしれない。
「すいません」
「あの・・部屋はどこにあるのでしょうか?住所とか教えてもらえれば」
「一緒に帰りますから、車を呼んでください」
そうだった・・・
仕事中は普通すぎて、というより如月はかなりデキるし常識的だ、だから男に愛人契約を持ちかけるような人物に思え無い為すっかり忘れていた。
今夜、その・・・相手をするのだろうか・・ そう思うと急に顔が赤くなった、なんだか変な気分だ。
部長とは一応、好意というのが介在していたが、如月にはそういう感情は無い。
法外な報酬にどんなことを要求されるのか不安が無いと言えば嘘になる。
後部座席に並んで座ると、如月は行先を告げるでも無く腕を組んでそのまま目を瞑る。
別宅のようなものも運転手には伝えてあるのだろうか?
どちらにしても、もう僕がどうのと言えない状況であるのは確かだし、僕の身体で借金も返せるならそれでいいと思うしかない。
すっかり忘れていたが部長はどうしただろう。
スマホを取り出してみると、今まで見たことの無い数のメッセージが入っていた。
通知バッチは130件、LINEを起動すると部長からのメッセージは108件になっていた。
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