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『いくらでも、私のを舐めていいから、なんなら君のもたっぷり舐めてあげる』
いたたまれない・・・
如月は恥ずかしい言葉がスピーカーから流れてきても、顔色ひとつ変えることなく
「田中部長、お疲れ様です。如月です。」
『は?如月?』
あきらかに動揺した声が聞こえてくる。
「本日、専務取締役に就任しました如月淳一です」
『き・・・如月専務・あの・・この携帯・・』
「橋本君のです。そして、今日から橋本君は私付きの秘書ですから今も一緒におります」
「ところで、プライベートで他部署の部長と平の社員との交流というのは珍しいですね」
『まぁ・・以前、橋本君がミスをしまして、それ以降、私が色々と教えております』
「そうですか、これからは必要ないです。橋本くんの直属の上司は私ということになりますので、私が教育します。」
さすがに、これで部長も何も言えないだろう。
『ですが』
うわ・・・まだ、何か言うんだろうか・・・・
如月はどう返すんだろう ほんとうに、いたたまれない・・
もう、終わりにしてほしい・・
「田中部長は新人教育に熱心だとお聞きしてます。」
「?」
『は?・・え・ええ・・そうですね、はやく一人前になって欲しいですから』
「確か、秘書課のリーダーと今年の新入社員、経理部の昨年入社の一人と橋本君の4名も“教育”してくださっていると報告が上がってます」
『いえ・・その・・・そ・・・それは・・』
部長がしどろもどろになっているのが少し可笑しかったが、如月のところに報告が上がっているだけでも僕を含め4人が部長の“教育”を受けていたことに更にショックを受ける。
「ほかの3人は確認はしておりませんが、橋本くんは“教育”は必要ないと言っておりますので、今後は無用です。
それから、社内の風紀などにも力を入れていく予定ですので、田中部長もそのあたりのことはよくよくと考えておいてください。
我が社には地方にも支社がありますし・・・って、田中部長はよくご存じですよね?田中部長の“教育”後、数名が田中部長の推薦によって地方支社へ移動になっているものがいると聞いてます」
ごくりとスピーカーからでも聞こえるほど、喉の鳴る音がした。
「それでは今後、橋本くんへの“教育”は無用です。プライベートでの接触も控えていただきます。」
「いいですね!」
さすがの部長も、ここまでキッパリと告げられて、さらには数人の不倫相手の話をされて引き下がるしかない。
『わかりました。失礼します』 電話をかけてきたときとは大違いな呟くような声で通話を終えた。
通話が切れると如月は無言でスマホを哲に返してきた。
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