おあずけでした

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おあずけでした

「あの・・・、ありがとうございました。僕・・遊ばれていただけでしたね」 「まったく、あんなわかりやすい男に引っかかるとか、たしかに俺が遅かったこともあるが、どうして待てなかった」 は?待つ? 「あの・・・」 聞きかけたところで 後部座席のドアが開けられた。 いつの間にか、目的地に到着していたようだった。 慌てて降りて運転手の隣に立ち如月が下車するのを待つ。 車寄せのある地下駐車場でまるでホテルのようだ、マンションの地下駐車場だとするとかなり大きなマンションのように思える。 「エレベーターはこっちです。カードキーを通さないと作動しませんし、駐車場からのエレベーターからは部屋のある階数にしかいけません。1Fロビーのエレベーターならどの階にも行けます」 そういって、カードキーをスキャンするとエレベーターの扉が開く、如月のあとについて乗り込むと観光地のタワーでしか見たことがないくらいの無数の階数ボタンがならんでいた。 そのなかで、35のところにランプがついていて、部屋は35階であることがわかる。 タワマン・・・・ そういえば、さっきも待てなかったとか・・“俺”とも言っていたな・・・気のせいかもしれないが部長に嫉妬をしているようにも聞こえる。それ以前に、あきらかに如月は僕のことを知っている。 チンという音と共にエレベーターの扉が開くと、どうぞと言って哲を先に降ろす。 こういう所作が様になっていて、育ちの良さを感じさせた。さらに、さらっと腰に腕をまわしてエスコートされるような形で廊下を二人で並んで歩いていた。 やっぱり、慣れているんだろうな、それよりも愛人宅がタワマンの上層階とか、どんだけ金が余ってるんだろう・・ 僕以外にも愛人がいるとすると、こんなマンションをいくつも持ってるんだろうか 「ここの名前だけど、グランタワージャルダン・デ・ザンジュ、まぁ長い名前ですが直訳すると天使の庭というらしい」 「天使の庭ですか・・・高いですからね」 と、どうでもいいことを返すと、如月はふっと笑って 「ここです、3510です」 もう一度カードキーをスキャンするとカチリと音をたてて解錠した。
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