おあずけでした

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「入って」 おずおずと部屋に入と、如月がずんずんと奥まで歩いていく、後をついていくと自分の部屋がいくつ入るんだろうと思うほどの広さのリビングがあり、一面がガラス張りで夜景が広がっていた。 「すごい・・・綺麗・・・」 「ここは自由に使ってください」 入ってきた廊下を戻りながら部屋の説明を受ける。 この部屋に一人で住むのだろうか?それとも、ほかにも愛人がいて愛人寮みたいなのだろうか? いろいろ混乱していると、廊下を挟んで向かい合わせにある扉の一つを指さして 「こっちが俺の部屋、で、こっちが哲の部屋です」 僕の部屋の扉を開くと今まで住んでいた部屋よりも、すこし広い部屋に、デスクやラックがそのまま置かれ、段ボール箱が数箱積まれていた。 もともと、荷物が少ないのでこんな感じだろうな・・・と、思いながらふとベッドだけが新しいものになっていることに気づく 「あの・・・」 「冷蔵庫などは必要がないので一旦レンタル倉庫へ預けてあります。あと、ベッドも田中部長とセックスしていたと思うと俺が複雑なのでレンタル倉庫へ入れました。その代わりに新しいベッドを設置してあります。」 改めて、セックスしていたベッドと言われると気恥ずかしい。 「思い出に取っておきたければ、そのまま倉庫を使ってもらえればいいですが、この部屋へは許可できません」 嫉妬でもしているように聞こえる。 というか 「オフでは俺って言うんですね」 「・・・・そうかもしれない」 気づいて無かったのか?それより、位牌と“あれ”はどうしただろう。段ボールに無造作に入れられているのではないだろうか。そう思うと、心がチリチリして急いで取り出そうと思ったとき、デスクの上に両親の位牌と寄せ木細工のからくり箱が入った小さなケースが置かれていた。 「ありがとう・・・段ボールに入れずに運んでくれたんだ」 扉を開き、両親の位牌と箱が入っているのを確認してから、からくり箱を手に持って如月の方を向くと部屋の扉のところに立っていた。 「あの・・・なんでそんなところにいるんですか?」 「一応、この部屋は今日から哲の部屋になりますから、ある程度のプライベートは守ります」 そもそも、勝手に引っ越しをしておいてプライベートもなにも無いと思うが、なんだか可笑しくなって「ぷっ」と噴き出してしまった。 「やっと、笑いましたね。」 「えっ?」 「別に、では、遠慮無く入ります」 淳一は部屋に入るとベッドに腰掛けた。 からくり箱の板を何度かスライドさせて中に入っているものを確認する。 中には、小さなリングが入っている。リングと言っても針金を丸くしてつなげただけのものであるが、僕にとっては大切な宝物だ。 「へぇ~そんなに簡単に開くんですね」 「ええ、コツさえつかめばすぐに開けられます。」 ベッドに座っていたはずの如月が気づくと背後に立っていた、箱の中を見られるのが恥ずかしくて慌てて閉じると 「人に見せられないものが入っているんですか?」 「見せられないというか・・・大切な思い出のようなものです」 「ふ~ん」そういいながら背後から抱きしめられた。
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