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あわてて自分の身体をみると、無数の鬱血あとがあった。
部長に付けられた痕・・・あの人は僕への愛撫はそこそこだが、こういう独占欲を満たすようなことは好きだった。
これじゃあ・・・淳一さんも嫌になる。
愛人初日は失敗だ・・・って、せめて口ですれば良かったんだろうか?
からくり箱を手にベッドの上に座り、中のリングを取り出す。
“困ったことが起こったら、助けに行くよ”と、彼は言ったが、どうしてそんな話になったのだろう?
両親が長い約束をした証に指輪を二人で付けると言っていたのを思い出して、約束をするなら指輪が必要だと言ったら、長い前髪のせいで表情はよくわからないが、口元は明らかに笑いながら、工場にあった針金を器用にまるめて指にはめてくれた。
今、思えばそれって単なる結婚指輪だと思うが、両親とも説明が変すぎて僕も変に解釈してしまった。
お兄さんは、僕の薬指にそれをはめてくれたが、今では小指にすら入らない。
それからは、何か辛いことがあったらこのリングを見て、いつか助けに来てくれると思いながら過ごしてきた。
もちろん、本気でそう思っていた訳ではなく、ある意味心の拠所だった。
あのお兄さんが何者なのか、何故あそこに居たのかもわからない。
結局、会社は潰れたし親父もお袋もいない。
一瞬、淳一さんがあの人かと思ったがあまりにも雰囲気が違う。
あのお兄さんは野暮ったかったが
淳一さんは、誰が見ても爽やか系のイケメンだ。
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