愛人契約しました

傷心しました

「楽しくない？」
そう聞かれて、部長夫婦の仲睦まじい姿を見たくないからとも言えず
「そういうわけではないですが、賑やか過ぎるのも苦手です」

「田中部長は婿養子ではあるけど、向こうの家の人に大切にされているし、おしどり夫婦って言われているだけあって、二人で並んでいる姿は良くお似合いだ。」

「そうですね」とだけ答える。
なんでそんなことを言うのかわからない、そもそもこの人物が誰なのかもわからない。
部長の言葉が全て嘘だったことが改めて心に突き刺さる。
それでも部長と別れることは出来るのだろうか、気持ちが冷めつつあっても、身体は冷めることがあるのか。
出会い系の掲示板で探すこともできるのかもしれないが、そもそも人見知りの自分にはそういう一歩を踏み出すことが難しい。
ぼんやりと考え込んでいた為、横にイケメンが座っていることを忘れていた。
イケメンは隣に座って哲の顔をニコニコと見ている、いったい何が面白いのかわからない。

「僕の顔を見ていて面白いですか？」

さも楽しいと言った表情で「楽しいよ」と、さらっと答える。

訳が分からない、からかわれたりするのは苦手だ、イケメンから離れるために無言で立ち上がる。

「私の愛人にならないか？」