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秀人は健気でか弱い女に惚れやすい。
女主人は前妻と多少の面識があり、彼女もまた同性を苛立たせる性格だった。ひばりみたく露骨ではなかったが、全てに愛され、全てに許された顔をしていたのを思い出す。
彼女は丸井の先代と心中をしたものの、秀人の心になお息づいている。女主人は先程の様子からも確信した。
ひばりは秀人の傷を癒やしたのかもしれない。しかし、秀人にとってひばりは使用人の域を出ていない。
前妻の衣装は自ら手掛けたのに、ひばりの時は女主人に任せきり。
ーー知らぬは、ひばりだけ。そう考えれば溜飲が下がる。
「それではこれで。今後もご贔屓下さいませ」
女主人は社交場仕込みの所作で別れを伝え、それを子供も真似て、ひばりも倣う。
今日の屋敷は女主人の他に様々な商人が出入りし、祝の品を次々運び込む。
一昔前まで暁月家は成金と蔑まれ、心象が良くなかったが、ここ最近は違う。福祉事業に積極的となって、特に身寄りのない子供の保護活動において名を知られる。
教会へ多額の寄付をし、孤児や生活困窮に食事や教育の場を提供もしているそうだ。
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