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スケート
「イサ、明日あたしとスケートに行かない」
ミカンをむきながらジュンちゃんが言った。二つ上の遠い親戚の女子。冬休み、テルおばちゃんちで何日かいっしょになる。
「行かない」
「どうして」
「ユウたちと行くから」
「あたしが誘ってあげてんだぞ」
「だって」
「なに」俺の顔をのぞきこむ。「男の約束とか」
「そうじゃないけど」
「いいわ。もう二度と誘ってやんない。こんな美人に誘ってもらえるチャンスなんてもう一生来ないかもね」
と言えるくらいの美人だ。美人で明るい。好きなタイプだ。たぶん頭もいい。だけど時々いじわるを言う。がきんちょ扱いも気に入らない。
俺もこたつの上からみかんを取った。
「どうしたの。ケンカでもしてんのかい」
テルおばちゃんがふかし芋を持ってきた。おれはミカンを半分口に入れた。半分ずつ食うのが俺のやり方だ。
「あたしとはスケート行きたくないんだって」
「からむなよ」
「からんでないでしょ。せっかく誘ってやったのに。これおいしい!」
「イサもたべな」
「うん」
ミャオミャオいいながら猫のサンタが帰ってきた。ジュンちゃんに鼻面をなでてもらって、こたつにもぐりこんだ。
「いっしょに行けばいいのに」
「ユウくんたちと行くんだって」
「ふうん」と言いながらおばちゃんは芋をかじった。
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