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ランダの贈り物
「敵はポルセウス奥の院。」
黒い森を抜ける頃、突然ジューノが言い出した。
「そしてファナもな。」
怪訝そうな顔をした者達を見渡し、
「邪神を創りだした司祭。それはポルペウス奥の院にいるはず。ヴァサゴの話しでは邪神ルグゼブは人の世の阿鼻叫喚を悦ぶ。奥の院に立て籠もる者達は死をも恐れず戦うと聞いたことがある。
その邪神を生み出した者は奥の院の司祭。
そして、ファナを連れ去ったのも司祭。」
「だが、それはアモールの司祭だぞ。」
アレンが異を唱える。
「やってることが同じなんだよ。
どっちが本物かは解らないが、奥の院の司祭は信者に命を懸けさせ、死ぬことを喜びとさせている。また、アモールの司祭は戦を起こし人々に苦痛を与える。どちらも邪神が悦びそうなことだ。
同じ穴の狢ってことだ。
そして、邪神を信奉する司祭の名はキュア。それはランダが教えてくれた。」
ジューノの話が終わる頃、そこら中からグールが現れだした。
「ランダめ、裏切ったな。」
アレンが闘いの姿勢をとったが、グール達は襲ってくることはなく、一行の足止めをするようにそこらをうろついた。
「待て、様子が変だ。軽々しく手を出すな。」
ジューノがアレンを手で制する。
暫く睨み合いが続いた後、森の奥からズルズルと巨大な蛇が這いずる音が聞こえてきた。
「間に合いましたね。」
現れたのは若い美女。
「ラミアが何の用だ。」
ジューノがその姿を睨む。
「争いに来たわけではありません。ランダ様の言づてを届けに。」
「ランダの言づて。」
アレンが横から口を挟む。
「そうです。
西の宝物庫に行きなさい。その地下迷宮の入り口にサイゼルだけに見える扉があります。その中の物を貴方に送るとのことです。」
「そこに何があるんだ。」
「それは仰いませんでした。
但し魔物が巣くい出しましたので気をつけろと、それに宝を護る怪物にも・・と。」
それだけを告げるとラミアは森に帰り、グール達も土の中に戻った。
「変わったのか・・あいつ。」
アレンが首を傾げる。
「ランダはランダだよ。ランダ以外の何ものでもない。
ただ・・・」
「ただ。」
ジューノの言葉をアレンが繰り返す。
「お前を産み、育った姿を見て僅かな母性が目覚めたのかも知れんがな。」
ジューノがニヤリと笑った。
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