ランダの贈り物

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 宝物庫、と言っても見た目はただの掘っ立て小屋。  「地下迷宮とか言ってたな。」  アレンを先頭に中に入り、その入り口を探す。が、四方は壁ばかり、何も見当たらない。  ジューノもミーアも目を凝らすが何も見つけられない。  「やっぱりな。騙されたんだよ、ランダに。」  アレンが憎々しげに唾を吐く。  その袖をサイゼルが引き、いつも持っている白墨で床に字を書く。  (外と内の奥行きが違う。)  アレンが外に飛び出し、戻ってくる。  「サイゼルの言うとおりだ。俺の足で二歩分くらい違う。」  その声に従い、奥の壁を叩いて回る。  コンコンと硬い音がドルースが叩いた一カ所だけポコンと音が変わった。  「たまには背の低いのが役に立つんだな。」  アレンがからかって笑い、ドルースがいつものように腹を立てる。その怒りの勢いでドルースがそこを蹴ったが壁はびくともしない。 「防壁(シールド)の魔術が施されているようだな。」  ジューノが横から口を挟む。  「どうにかならないのか。」  アレンの声に、  「素性が解らん。対抗するには時間が掛かる。何か他の方法があるはずだ。」  ジューノは壁をあちこちと触りだした。 「サイゼルは・・・」  振り向いたドルースが慌てた声を上げる。  「さっきまでここに・・・」  ミーアも慌てる。  耳を凝らすと建物の裏で戦闘の音。  アレンとジューノが急いで飛び出す。  宝物庫の裏、そこには黒い灰になりかけた魔物とサイゼルがいた。  サイゼルが指さす先、仄かに光る扉が見える。  「先入観か・・・人は建物があるとその中に扉があると思い込んでしまう。心理の裏を上手く突いている。  これから先も気を付けんとな。」  ジューノはスクナヒコを呼び出した。  「地下迷宮。その通路を全て覚えさせる。  魔物の出現に対してはサイゼルのブルベガーとアレンの鼻に頼るしかなさそうだ。  組を作るのはサイゼル、ミーア、ドルースの組。それに俺とアレンの二組にする。はぐれたときの連絡にはアガシオンを使う。  行くぞ、ランダの贈り物を貰いに。」  ジューノは仄かに光る扉を蹴り開けた。  闇の底に続く階段、灯りを欲しがり、アレンが火鼠を呼ぼうとするのをジューノが止めた、この先どんな魔物が現れ、火鼠がその餌食にならないかも知れないとの理由(わけ)で。  「一つ試してみてくれないか。」  ジューノがミーアを見る。  「土に光をもたらせないか。」  ミーアが念を込める。時間は掛かったが土床が仄かに坑道を照らし出す。  「出来たな。」  ジューノが満足そうに頷く。  地の底まで続くような階段を降りると広々とした踊り場が見えた。そこに向けブルベガーが吠える。  「最初の相手のようだな。」  土が盛り上がり奇妙な服を着た女達が立ち上がる。  「マンイーターですか。しかしこいつ等を操る奴がいるはず。」  ジューノが警戒の色を見せる。  マンイーターの後ろに現れたのは背が高く、瓜のような色の顔をし、長い歯がまばらに生えた魔物。一本足で足首のつき方は後ろ前、手足には指が三本だけ生えている、化け物。その前には三頭の虎をはびらせ、黒く長い爪をカチカチと鳴らしている。  「サンショウか、虎がやっかいだな。」  グルグルと獲物を前に喉を鳴らす虎をジューノが見つめる。  「アレン、お前は虎には手を出すな。命を持っている。」  ドルースの手を離れた大鎌が唸り、後方から飛来した刃が一頭の虎の首を切り飛ばした。  「よし、虎の相手は俺とドルースがする。サイゼルはマンイーターを斃せ。アレンはサンショウだ。」  だが、ジューノの指示を無視してアレンが虎と睨み合った。  「何をする気だ。」 ジューノが怒鳴る。 「ジューノ、俺とサンショウとやらの権能(パワー)はどっちが上だ。」  「お前だ。」  「なら、この変な奴が虎を扱えるなら、俺にも出来るはずだ。」  ジューノが苦笑を漏らす。  「ドルース、サンショウって奴はお前に任せる。ぶっ倒せ。」  「へん・・言われるまでもないよ。」  ドルースは呼び出したイヒカに牽制させ、その間に大鎌でサンショウを屠った。  「いいコンビだな。」  言うとすぐにジューノはサイゼルを振り向く。  「そんな奴らをいつまでも相手にしていてもお前の経験値は増えない・・・」  その時にはサイゼルが放つ光に包まれマンイーターは全て消し飛んでいた。  「俺だけか・・・」  ジューノは生ける虎に対峙し、胸から生え出た手が印を結ぶと、無数の小さな火の玉が飛び出し吠える虎にその数だけの火穴を開けた。  その間にアレンは一頭の虎を従えていた。
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