奥の院の門を潜る

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奥の院の門を潜る

 「あれほど手を出すなと言ったに・・ガープは潰えたか。  ・・まあ良かろういずれにせよ邪魔な四人は潰さねばならぬ。」  門の前に立つ五人の姿を高窓から見下ろしキュアは独りごちた。  「遂にここまで来たな。」  アレンが感慨深げに言う。その前に聳え立つのは真っ黒い門扉。この中にファナが・・・  「さて、この中にどうやって入るか・・だな。」  ジューノが門を見上げる。  「そんな事より静かすぎると思わないか。」  横からドルースの声。  「ネヴァンに偵察させるか。」  「待て、何が居るか解らん。」  ジューノとアレンの会話の間にギギッと扉が軋み音を上げ、サッと緊張が奔る。  サイゼルが右手を差し出しブルベガーを呼ぼうとする。が、  「止めておけ。門内の塑像が見えるか。あれは肉柱、デーモンだ。ブルベガーなど簡単に潰される。」  言うとジューノはファイアドレイクの呪符を門内に投げた。  現れるとすぐにファイアドレイクが猛烈な炎を吐く。と肉柱は火の柱となり、崩れ落ちた。  「悪魔にも階位(レヴェル)がある。一番下が以前闘ったイーブル。次が今のデーモン。そしてデヴィルとなる。その力は低位から下位ではあるが侮れない。  これからも何が出るか解らん。索敵には竜を使う。  そしてお前の鼻もな。」  ジューノはアレンの顔を見て笑った。  「俺の・・・」  アレンが自分の鼻を指さす。  「大分効くようになったな。  現れた魔物の階位(レヴェル)、自分達の権能(パワー)を嗅ぎ分けきれるようになったようだ。」  「多少はな。」  アレンがニヤリと笑った。  「竜を先頭に進む。邪魔な者はまず奴が相手をしてくれる。」  「解るのか、邪悪な者が。」  「いや・・」  「ならばなぜ。」  「これだけ静かだと言うことはここには人はいない。現れるのは魔物だけのはずだ。動く物は全て薙ぎ倒させる。」  「乱暴すぎないか・・・」  「それしか手は無い。」  アレンとジューノの会話の先でファイアドレイクが魔宮の入り口を太い尻尾で叩き壊した。  「相手に知れるぞ。」  「どのみち知れている。」  ドルースが慌てるのをジューノは軽く一蹴した。  ジューノが言うとおり魔宮の中も静かだった。だだっ広い廊下が真っ直ぐに奥へとつながり、その両脇にはそれぞれ違う武器を手にした甲冑だけが並んでいる。  「気をつけろ。臭うぞ。」  アレンが鼻を動かす。が、甲冑以外は何もない。  ドレイク、アレンと縦に並び、一歩一歩慎重に足を進める。  三番目を歩くサイゼルの目の前からアレンが突如姿を消した。そこに口を開けた落とし穴が徐々に閉じていく。  そしてその先には門内で見たと同じ肉柱がくねくねと動いている。そして・・ミーアの悲鳴。動かぬはずの甲冑の一撃をドルースが大鎌で辛うじて受け止めていた。  「罠か・・ここは宮殿ではない悪魔の巣窟だ。」  ジューノが言った瞬間、ぐにゃりと壁が歪む。  「突っ切るぞ、奥の扉まで走れ、その先に邪神の本体がいるはずだ。」  ファイアドレイクを後に残し、四人は一目散に扉を目指した。だが着かない・・そこに見える扉にどれだけ走ってもたどり着けない。  幻影・・ジューノが臍を噛む。その横でサイゼルの躰が淡く光を放ち全てを照らす。  目の前にあったのは扉。それをサイゼルが静かに押し開けた。 ×  ×  ×  ×  地下に落ちたアレンの頭上で落とし穴の口が閉じ真っ暗になる。その中でペタッ、ペタッと足音がする。  アレンはこめかみに指を当て、  「見えているんだよ、俺には。」  言いながら足音の主にクナイを投げる。と痩せさらばえた老人が倒れ、塵と成って消えた。  「まだいるようだな。」  アレンは暗闇に声を掛け、右手でクナイを拾い左手で大振りのナイフを握る。  数体の老人を斃し尽くし、アレンは先に進む覚悟を決めた。その足下、道が狭まり、その両脇には水がたまっている。その中から胸ビレを翼のように羽ばたかせた手足のないカエルが跳びかかってきた。大型犬ほどもあるその魔物を次々に屠りながらアレンは足を急がせた。
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