奥の院の門を潜る

3/4
前へ
/126ページ
次へ
 ミーアの足下、石畳の下、土が動く、そして・・・  石畳を吹き飛ばしてグリーンマンが現れた。  「アレン。」  その穴から飛び出した影にジューノが大声を掛ける。だがその影は魔物、人の倍はあろうかという長大な蜥蜴。  そしてミーアに目を遣ると、吹き飛ばされたその躰をアレンが抱きかかえていた。  「ミーア石畳はなくなった。土壁を急げ。アレンは・・」  その時は既にネヴァンは中空に舞っていた。  「現れたは良いがヨーウィを三体も連れてきたか。」  ジューノがアレンに笑いかける。  「サイゼル、なぜ闘わん。お前が闘えばヒノカグツチが現れるだろうが。」  ミーアを地に下ろしながらアレンが叫ぶ。  独り蚊帳の外のサイゼルがはっと我に返り、ファルシオンを抜くと、辺りが火の光に包まれた。炎の化身ヒノカグツチその躰から猛烈な炎の玉が幾つも飛びデーモンがそれに焼き尽くされていく。  「これはこれは・・・」  司祭・・キュアが驚きの顔を見せる。  「ヒノカグツチまでを僕(しもべ)とするとは。」  その横で火球の一つが邪神の像に当たった。  熱に当てられた邪神の像の回りの空気をジューノが凍らせる。  ピシッと像に一本のひびが入り、それが蜘蛛の巣状に拡がっていった。  ガラッと石像の一部が崩れると、ブルッと石像自身が身震いをした。  「こいつが本体だ。」  ジューノが叫ぶ。  石畳を弾き飛ばし肉質の触手が迫ってくる。が、それをサイゼルのファルシオンが斬り飛ばした。  「やりますね。」  キュアの言葉の横で石像の表皮がガラガラと盛大な音を発して崩れ落ちる。  そこに姿を現したのは異形の邪神ルグゼブ。人の頭に山羊の角を持ち、狼のように長い鼻頭、耳まで避けた口には鋭く尖った牙が並んでいる。  「ここまで育っていたか。」  ジューノが唸る。  「まだこの程度ですよ。」  それに対しキュアが唇の端だけで笑いを造る。  ジューノは続けて二枚の式札を投げた。  先に現れたアンフィスバエナが邪神に巻き付き、その躰に噛みつく。がその毒も邪神には何の効果も現さない。  そしてファイアドレイクその口から吐く火も邪神には通じない。  「アレン、ミーアとドルースを連れて逃げろ。二人が人質に取られる可能性がある。」  「良くお分かりですな。」  「こいつの相手は俺がする。お前はルグゼブと闘え。」  ジューノがサイゼルに声を掛ける。  「他の魔物は。」  その場を去ることを厭がるミーアの腹に当て身を与え肩に担いだアレンの大声。  「俺とサイゼルの召喚魔全てを当てる。  お前は急げ・・急いで外に出るんだ。」  「良い判断ですよ、陰陽師さん。  ですが貴方の力が私に通じますかな。  それとも時間稼ぎですかな。  それに扉の外にもデーモンはいますが。」
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加