終章 アリアスの悲劇

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 火の谷・・夥しい血を吸い後には“死の谷”と呼ばれる地。その地に敵は待ち構えていた。  人の兵が約三百、その後ろに亜人の群れ百ほど。その奥の高台に一人の司祭が立っている。  あれが七賢者に聞いたキュアか。アリアスがその姿を睨む。その眼の先、人の部隊が押し寄せて来る。  「押し返せ。」  アリアスの檄が飛ぶ。が、良く訓練された者同士、力は互角。お互いが次々に傷つき倒れていく。  その戦いに加わったのが亜人の一団。その戦闘力は凄まじく情勢が傾き掛ける。だがその一団が次々と炎に襲われる。 アリアスが振り向くとベヘルがニヤリと笑った。  そして、上空に大きな黒い影。ウォレスが率いる竜騎兵が急角度で舞い降り亜人の部隊を潰していく。  「良し、総攻撃だ。マーラン、頼むぞ。」  アリアスの軍がかさに懸かる。その向こうでキュアが天空に手を上げ、そして振り降ろした。  地面を赤黒い影が走る。  すると、戦いに斃れたはずの屍体がむくむくと起き出した。 恐怖・・生ける人にとってはその姿は恐怖以外の何ものでも無かった。斬られた腕を振り回し、闘う兵達にかぶりついてくる。  「そいつ等はグール、頭を狙え。」  珍しくベヘルが指示を出す。  「よくご存じですな。ですが闘いが続く限りまだまだ増えますぞ。」  高台に立つキュアの静かな声がどういう訳かここまで聞こえる。  「死人使いを狙え。」  マーランが率いるエルフの一軍に矢の狙い先を指示する。  飛び行く矢は次々とキュアの躰を捕らえた。だが、その矢がその躰から押し出され地に落ちる。  「もう一つ。」  キュアはもう一度天を指さした。その指の遙か向こうに胡麻粒ほどの無数の点が現れ、それが徐々に大きくなってくる。  「空飛ぶ妖魔・・ガーゴイル・・・」  アリアスの横でベヘルが弱々しい声で呟き、  「前線へ向かいます。」  と、その場から消えた。しかしそれは、キュアに降伏する為だった。  地上では亜人と死人の群れ、空には無数のガーゴイル。そしてキュアの横にもう一隊。馬に跨がった若い騎士が率いる騎馬隊が・・・  「セイロス。」  キュアはアリアスを指さし若い騎士をそう呼んだ。  「ああ・・・」  アリアスは呻き声と共に天を見上げた。  “光の子”は既に闇の手に・・・  アリアスは単騎馬を走らせ、キュアに確かに一太刀を浴びせた。だが、破邪の剣に両断されたはずのキュアは何ごとも無かったようにその場に立ち、セイロスに向け親指を下に向けた。 呆然と立ち尽くすアリアスが身に着けた勇者の鎧の胸をセイロスが放った雷(いかずち)の矢が刺し貫いた。          完 これでロンギオスの炎Ⅱは完結です。 後は、ロンギオスの炎Ⅲシリーズをお楽しみください。 個々まで読み進めて頂き、ありがとうございます。                      by たかさん
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