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二人の司祭
その頃より十年ほど前、ボスポラスの中腹に民の手を借り神殿を築き始めた四十歳ほどの男がいた。
それは、元々あったポルペウス神殿の上、頂上を間近に臨む地であった。
その一方で、同じサンクルス教を奉じるプリンツ神国の教都であるポルペウスに住む神官達は、それをけして快くは思っていなかった。
「どこの誰かは知らぬが、要らぬ事をしてくれる。」
時の教皇スワージは苦い顔をした。
「フランツの兵を送りましょうか。」
「まずは、聖なる山、ポルペウスより退去するよう警告を与え、様子を見ておけ。」
取り巻きの神官の進言にスワージはそう答えた。
その警告を無視して、ポルペウスの高みに登った男は民衆を督励し、神殿を築き続けた。
数ヶ月のやり取りを経て、業を煮やしたかスワージは遂にフランツの兵を動かした。
「兵が来るぞ。
我等は神に愛でられた者。
神の業(わざ)をなす者。
戦える者は鎌を取れ。斧を手にしろ。神は我等の後ろにある。」
男の檄に乗り、息せき切って下から押し寄せてくる兵に民衆が襲いかかった。
痛みが、苦しさが、そして憎しみが山を覆う。
勝利の凱歌、勝利の酔い。そして苦痛の呻き、死に行く者の嘆き、殉教者を送る者の涙。
阿鼻叫喚の渦に中に様々な声が混じった。
その後、何度もフランツの兵が押し寄せた。だが、ポルペウス宮殿の上に陣取った民は、たった独りの男の指揮の下、それを尽(ことごと)く退けた。
「心と体を磨け。
それが神の意志に適(かな)い、お前等は神の子となっていく。
苦難の中にこそ、そこへと続く道はある。」
数が少なくなると女子供までが武器を手に取った。
そんな中、どこからどう調達してきたのかその男は剣、槍、弓をその神殿に運び込み、屈強な若者達にそれらを渡した。
民が民兵となり、兵士となっていく。
誰ともなく人々は男を司祭様と呼んだ。
その司祭の元、徐々に組織が出来上がり、一つの軍勢が出来た。
その中に一塊(ひとかたまり)、どこから来たのか真っ黒な皮鎧を着けた戦士達がいた。
「私達も仲間に加えてくれないか。」
その男は野太い声で言った。
「貴公らに何が出来る。」
「兵を率いること。」
「死ぬかも知れぬぞ。」
「覚悟はしておる。」
「よかろう。
兵を率い、軍と成せ。」
その日からその一隊を中心に、本当の意味の闘う為の軍が編成された。
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