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「そこまでかな。」
救いの神というか、その場にこの村の長老が現れた。
「あんた名前は何と言った。」
「アリアスです。モングレトロスから来ました。」
「偉大なる山の民か・・・
ところで今回は何しにここに来た。」
「バルバロッサ退治のためオービタス山地を目指していると、ほぼ無傷のこの村が眼に入りました。
そこでここを根拠地に出来ないかと思って訪ねて参りました。」
「兵は居るのか。」
「ここからほど無い所に約二百。」
「それだけ居れば、ここを根拠とするならば一挙に攻め落とせば良かったろう。」
「とんでもない。私達は好んで戦いを仕掛けるものではありません。
それでこのオーエンさんに話していたのですが、このままここで闘えば村人達に塗炭の苦しみを与えます。ですから私達の村モングレトロスに皆さんで来ないかと。」
「話が飛躍しすぎはしないか。」
「いいえ、バルバロッサは領土を持たないと聞きます。ですから神出鬼没と言うか手当たり次第に村々を襲っています。その上残忍とも聞きます。
そこでここいらの何処かにそれと闘う戦士達の根拠地を置き、バルバロッサに圧力を掛けます。北西の地にはフィルリア王国があり、バルバロッサをオービタス山地に押し込むことが可能だと考えます。」
「それではこの村で無くとも良かろう。」
「いいえ、この村でなければなりません。すでにバルバロッサに対する備えは出来、その上バルバロッサ達の跳梁範囲に突出しています。つまり彼らを押さえるには最適な地だと考えています。」
「食料などはどうする。」
「基本的には自給自足のつもりですが、まわりの村々から頂ける物もあるのではないかと思っています。
また生産を行うには人手も入ります。その為にこの村とまわりの村々から若い男女を集めます。」
「簡単に闘うと言うが、この村で闘える者は三十人に過ぎないぞ。それに対するバルバロッサは数知れず。その数でどうやって闘う。」
「確かにバルバロッサの数は多いと聞いています。が、実際に村々を襲うときに動く人数は百人足らず。時には二、三十人と聞いています。それに対して私は先ほども言いましたが、二百人ほどの戦士を引き連れて参りました。それにバルバロッサとの戦いと知れば、他の村からも有意の者達が集まってきましょう。
バルバロッサが村を襲う気配を察知しそれを事前に叩くことを続ければ、自ずとこの村に相手の戦力が集まってきます。それと闘うためには村の人達に困苦を味あわせたくない・・ですから私の村に避難をお願いしたいのです。」
ちょっと待ってくれ。と言って長老は村の奥に引き取った。
それから小一時間・・・
「了解した。三日後から移動を始める。
ただ問題もある。モングレトロスは本当に受け入れてくれるのか。また、その間貴方が連れてきた兵士はどうするのか。
この二つを訊きたい。」
「モングレトロスにはこの間に使者を出します。また、この村に動きがあればバルバロッサはそれに乗じて襲ってくるはずです。それに対するためにも私達は村の外で駐屯し、村人の移動の際には人員を半分割き、護衛して行く予定です。」
その夜、長老と村の主立った者達はモングレトロスの戦士宿営地を訪れた。その中には当然オーエンの姿もあった。
規律正しい戦士達の態度に触れて安心したのか、長老達は安堵の表情で村へ帰っていった。
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