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アリアスの活躍の噂を聞きつけたフィルリアからの使者が村を訪れたのは、翌年の春のこと、それはフィルリアへの仕官を求める話だった。その使者を待たせ、アリアス達が集まったのはいつものようにお婆の家だった。
「どう思う。」
まず言葉を発したのはジュドウだった。
「解らん。」
それにアリアスが応える。
そこにレイエスが入ってきた。
「ずいぶん困っているようだぞフィルリアは。」
レイエス、諜報隊の長、三月ほど前にお婆に諭され、今は全軍の目と耳の役目を一身に担っている。
「俺達が山地に追いやったバルバロッサが出口を求めフィルリアを脅かしている。
それにあの国の北、ローヌ川の南岸で野盗が集まり気勢を上げている。
それでなくともレジュアスの勃興に気を遣っている所にこの二つの勢力だ・・人が足りない。
そこでお前だ。お前の力を欲している。」
「俺達が認められたと言うことか。」
「そんな甘いもんじゃないよ。」
ジュドウの言葉をレイエスが否定する。
「ここはレジュアスにも近い。レジュアスが勢力を伸ばし、我等がレジュアスの傘下に入る前に手を打とうって訳さ。
餌をちらつかせてな。」
「さて、どうしたものかのう。」
お婆は言葉とは裏腹の笑いを見せた。
「フィルリアへ行きましょう。」
突然アリアスが言い出した。
「おい待てよ。身売りする気か。俺達の目的は・・
それに、俺達が仕官すれば、レジュアスがここを襲わんとも限らんぞ。」
「その俺達の目的を達成するために要るものは何だ。」
アリアスとレイエスの議論が始まる。
「人と金・・まあ極端な言い方をすればだがな。」
「フィルリアにもレジュアスにも恨みを買わず、しかも金も手に入る。
そんな巧い手が一つだけある。」
それからアリアスは時間をかけてレイエスとジュドウにその巧い手を説明し、
「ところで・・」
と、話を変えた。
「お前の組織は上手く動いているか。」
「ああ、七隊を三つにに分けて使っている。」
アリアスがレイエスのその言葉に興味を示す。
「三隊が諜報に当たる為各地に散らばっている。その間、三隊はこの村で休養。行きっぱなしとはいかないからな。」
「残りの一隊は。」
「今はオーエンとの連絡に当てている。」
「オーエン・・か。今度は彼の手も借りたいな。
お婆、何か手は・・・」
「あの村の辺りは今・・収まっている。壮年の者達でよかろう。彼らもお前らに感化され武芸に励んでいたからな。」
「レイエス、オーエンの所に闘える者はどれ位居る。」
「約二百。」
「その半分を率いてここに来るように伝えてくれ。」
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