砂漠の向こう側

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砂嵐が舞う午後。 一匹の猫がのらりのらりと視線を散りばめながら 歩いている。 東を見ても砂。 西を見ても砂。 北も南も砂砂砂。 砂漠の真ん中を猫が 息も絶え絶え歩いている。 その表情からは人間でいうところの 「もう、限界。」というものが窺え 一見、相性の良さそうな砂達を絶望の表情で猫は見ている。 なぜ、こんなところにいるのだろう。 迷いこんでしまったのか、人間に置いていかれたのか、元々住んでいたのか、そもそも砂漠に猫は生息しているのか等諸々わからないが、猫がもう何日も水を飲んでいなく、今にも絶命しそうなことは確かである。 なぜこんなところにいるのだろう。 その表情からは、漫画化された猫でいうところの「もう、駄目ニャ」というものが窺え、いっそのこと太陽に額を向けて楽になろうかと、猫が諦めかけたその眼前に突然緑の物体が佇んでいた。 サボテンだ。 大きさにして猫の三倍はあるだろうか。 しかし、これはどこからどう見ても食べれないし、喉も潤さない。 しかもどうやら触れただけで痛そうなトゲがついている。 しかし何日もずっと同じ色の景色しか見ていなかった猫に久々に現れた緑。 倒れかけていた身体は無意識にサボテンに近付き、痛いのは承知でそれに抱き付こうとした。 するとその刹那、サボテンの表面にあるトゲが全てみるみるうちに体内に戻っていったのである。 つるつるてんになったサボテンを不思議がりながらも、神の御助けと思い猫はサボテンに抱き付いた。 それはそれは柔らかく、昔一緒にいた人間の身体を久々に思い出した猫は 「よし、これで清らかにあの世にいける」と思った。 すると目を瞑っていた猫の瞼に一粒の水滴が落ちた。 猫は雨かと思い、空を見るも晴天そのものである。 すると、さらに水滴が猫を濡らした。 今度は何滴も落ちてきた。 どこからだろうと猫は見渡すと近くから落ちてきていることがわかった。 そう、サボテンが水を出していたのだ。 みるみるうちにサボテンと猫の周りには水が溢れた。 砂がすぐに水を吸収してしまうので ずぶ濡れになったサボテンの全身を猫は舐めまわした。 猫は命を感じた。 もしかしたらサボテンも同じことを感じていたのかもしれない。 その光景が何日も何日も続いた。 その光景をずっと撮り続けている男がいた。 「ありがとう、神様」 彼は、売れないカメラマンだったらしい。
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