出逢い

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自転車で、ブッ飛ばせば15分以内には到着する大手ショッピングセンターの食品スーパーで働く私は、パートタイマー。まぁ、女だから正社員じゃなくとも生活に支障のない暮らしさえ出来ればいい、実家暮らしだし、と自分に取って都合の良い生活を送っています。 「お疲れ様ぁ」 「お疲れ。ヘタれてるわもう」 「間に合ったね、ってか汗すごっ」 「ごめんね、遅れるかと思ってメールした」 ひと呼吸置いてから、ロッカーを開けて着替える。 念の為にメールを送っておいた相手は、同じ時間帯で働く鳴戸雪(なるとゆき)24歳、私と同じくフリーター。そして、完全なるギャルだ。 「抜け道使って、斜め横断しまくりよ」 「信号通らなければ時間短縮出来るから、チャリはそこは有利だね」 「そうそう」 「いいね」 クールで無口、毒舌、そんな彼女は年上の私にもタメ口で話をしてくれる。彼女はちなみにハーレーの単車で通勤している凄女子。 オーデコロンのいい匂いをさせながら、襟を立て着替え終わった胸元からは金のネックレス、耳元から大きなリングのピアスを外す。 私はというと、自転車通勤でただの汗臭い女。 「美音さん行こ」 「あ?え?もう?タバコ吸わないの?」 彼女はいつもタバコを吸ってから行くのだが、 「今日集礼あるって、聞いてないの?」 「あっ、そっか、そうなのか」 見た目はギャルでも、仕事はキッチリバッチリ。接客もうまくて、レジと補充兼用。中身はしっかりしているので、年下の彼女にいつも頼ってしまう。 私の作業は食品管理と補充のみ。計算出来ないし接客も下手くそだから。というか、絡みたくない極力どうでもいいのと。人付き合いは疲れるから。愛想笑いが苦手。時々日本語なんて通じなきゃいいのにと思う。マスクの下では相当な極悪人。 「ボケてるね」 「うん、ごめん」 「大丈夫、集礼で目が覚めるって」 「やだ、それ〜、当てられたくない」 「美音さんいつも当てられるからね」 「予知みたいでやめてよ〜」 「予知かな〜、現実かな〜」 「悪魔だね…」 私達はこうして昼からの部隊として働きに行く。 あぁ〜眠い。今日も仕事早く終われ。 早く帰りたい、早くご飯食べたい、早く寝たい。 どうか今日も面倒な事が起こりませんように。 話しかけられないように、オーラを出さないで、いかに透明人間のように仕事をするか、そんな事ばかり考えながら集礼に参加している。 売上とか前年対比とか、そんな事は社員が把握しておけばいい。私の興味があるのは新商品のお菓子とカップラーメンだけ。 「高遠さん!本日発売日の商品、ツーパレットで置いてありますんで、商品名分かってますよね!?」 こうやって、突然名指しで聞かれる。 「は、はい!〇〇製粉の焦がし醤油ラーメンです!」 ラーメンならば、大好きだから即答できる。 早く買って食べたい。 鳴戸さんがニヤリと私を見て、私もニヤリと笑う。
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