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40分間の休憩時間で鳴戸さんとかぶった時は、一緒に取る。そうじゃない時はなるべく一人で取る。
オバちゃんたちもいるけど、ネタはいつも「私への結婚のさいそく」と「子どもの自慢話」そして「お金の話」あとは悪口と愚痴。
ハッキリ言って面倒臭い。
聞けば聞くほど、一人の時間がどれだけ大切なのか、という事しか私には伝わってこないので、なるべく一人で休憩時間は取る。
鳴戸さんは、見た目がギャルだからオバちゃんたちからはイカつく見えるようで、寄り付かないみたいで一人で居る。
というか彼女も私も、一匹狼だから一人でも平気。
しかし今日は一緒に休憩時間を過ごす。
「最近寝ても毎回同じ夢を見るんだよね、なんかこう笛の音がさ、聞こえてくるとそっちに身体が流れて行くように彷徨い歩き続けるのさ」
私は近頃、同じ夢ばかり見るのだと鳴戸さんに話した。
「不思議な事と言えば不思議だけど、なんか印象深い事でもあったりした?」
「全然」
「彷徨い歩いてどこに結局辿り着くわけ?」
「あんまりしっかりとは思い出せないけど、なんかね真っ白過ぎて、何もない感じ?」
「は?何それ」
「う〜ん、どこかで覚えているような覚えてないような、勝手に悲しくなってきて泣いちゃう感じ?」
「勝手に泣くの?悲しくなる要素どっか有る?」
「寒いというのか寂しいというのか」
「寒いから泣いてんだよ、それ」
「そっか、そうかもね」
でも、その後に誰かの手のひらが微かに見たり見えなかったりして、微かに笛の音も聞こえたり、聞こえなかったりするの。
「で、ちゃんと目が覚めるって事なら寒さをしのげたって事じゃないの?たんなる部屋ん中が寒いだけでしょ?」
確かにまだ、春先だし、私の部屋の窓は3箇所もある。古いし隙間風も入るしな。
「もう春だし、暖かくなってきたら、そんな夢も見なくなるよ。潜在意識で寒いって訴えて掛けてるのかもよ?」
「潜在意識ねぇ〜」
「もしくは風邪を引いてるだけかも」
「風邪かい」
にしては、笛の音が強く聞こえる時は、なんだか夢の中の私はとても優しい気持ち、温かい気持ちが広がって、安心したりもするのだよね。
何故か、不思議な事に。
よく分からないけど。
「ストレス?」
「むむむっ、それは多いに有るかもだな」
「ストレスも潜在意識に残るらしいよ。美音さん怒り癖があるっしょ?」
「確かに」
私は寝付きも悪く、だいたいいつも腹が立つと目がギンギンギラギラに冴えて眠れないのだ。寝てもすぐに起きてしまう。
だからストレスは昔から抱え込むタイプなのは間違いない。消耗も早く、容量も常に少ない状態。短時間でオーバーヒート。自分でも結構扱いづらい所でもある。
鳴戸さんは結論を下す。
運動するか、旅行へ行くか、音楽で癒やされるか。
どれかで気を晴らせと。
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