ニ、二度有る事は三度有る

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この一ヶ月の間で、見ず知らずのコイツと三回も遭遇している。 偶然が続き過ぎて、気持ち悪いし気味が悪い。 奏は、いつの間にかクルリと回って私の横に来て、 「おねえさん、なんの本を借りに来たの?」 「えっ、何ってその…」 襟シャツの襟を立て、ブルージーンズ。 髪の毛の色が黒になっていた。 さ、爽やかな若者?! 抱えていた本に触れようとしてきたので、とっさに隠した。 「か、関係ないでしょ!馴れ馴れしいんだからもぉ!下がりなさいよ!」 手のひらで大袈裟に追い払う。 「ねぇ、頭大丈夫?」 何を言うかと思いきや、 「あんた失礼ね!」 馬鹿だって言いたいわけ!? 「違う違う、ほら、こないだの。頭をぶつけた時の」 取り乱す私に奏は笑っていた。 「あんたのせいでタンコブ出来たんだからね!!」 思わず図書館で大きな声を出してしまい、周囲から冷たい視線を送られる。 「声が大きいって。静かに静かに」 奏は私の腕を掴んでどこかに連れて行こうとする。 「どこ連れて行く気?!」 ジタバタする私の口元に人差し指をあてられる。 「続きは談話室で」 ニッコリ笑って私を連れ去った。 だ、談話室?! 「ほら、ここは超防音だから大きい声出しても平気だよ」 長椅子に腰掛けて長い足をいっちょ前に組んで、隣に座れと、椅子を軽く叩いて呼ぶ。 なんで私が。 「なんなのよ、全くもぉ」 あんまりこんな若い男の子と、こんなに側に近寄って話す事もないから、私は直視出来ずに持っている本の表紙を見ていた。 「夢占い、大夢辞典って、占い師かなんかやってんの?そんな本ばっか借りてるけど」 「そんな訳ないでしょ」 「じゃあ単純に夢の中の話に興味が有るんだね」 「…」 コイツに一切私の素性を話す必要はない。 「俺も夢には興味あるよ。俺の夢と言えば、これ」 奏は私に借りようとしている本の表紙を見せてきた。 古典楽器? 「俺は古典楽器の資料集め」 横笛奏者の本? 全然ミスマッチなんですけど。 「俺、ヘビメタが好きで友達とバンド組んだり、音楽の専門学校も通ってんだけどさ。小さい頃から爺ちゃんの影響もあって、古典楽器の横笛の演奏者に将来なりたいなぁと思う気持ちがだんだん強くなって、これを本格的に勉強しようと、本を借りに来たんだぁ」 将来の夢の方か。

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