第五章〜友達〜

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第五章〜友達〜

次の日の朝、草太は「春人…今日、あの子と三人でこの後の授業サボらねぇ?」と春人に言った。 「急にどうした?」と聞くと草太は「やる気出なくてさぁ…」と言うと春人は「別に僕は良いけど?昼飯は?」と聞くと「あの子にはさっき言った」と草太は言い帰りの支度を始めた、春人は「わかった」と言った。 休み時間、三人は昼飯やお菓子と飲み物を買い屋上へ向かった。「このタマゴロール美味し〜」と桜が言うと「初めて食べた?」と春人が言うと草太は「これも美味しよ!」と言いお菓子を桜に差し出した。 「おいしー」と桜は安心したのか笑顔で言うと見ていた草太が「やっと笑ってくれた」と言うと桜は赤面をしながら下を向いた。それを見て春人は「花枝…一つ聞いても良い?」と言うと桜は「うん」と答えた、「そのキズどうした?」と聞くと桜はキズを隠した。 「花枝が笑えないのってそれが原因?」と草太が聞くと桜は黙った。 春人は話しを続け「女子なのにキズ多過ぎない?」と言われ桜は春人が自分を見ていた事を理解した。 服で隠れている所が多いのに彼はよく見ていて、それに軽い口調で、同じクラスでも、ほとんど話した事の無いのになぜか素直に話せた「いじめられてるの…」と言うと「体育館裏でリンチにされてるよね?」と春人に言われ桜は「知ってたの?」と言うと「知ってたと言うか…コンテナの上から見えてた」と言われ桜は呆れた…(この人知ってたのに言わせたんだ)と思った。しかし、それよりも(これで二人に気を使わず楽にできる)と言う方が強かった。 桜は少しホッとした、それを見た春人は話し続けた、「花江って、泣きも、喚きも、抵抗も、黙ってやられてるよね」と言われ桜は「まぁ…」と答えた。いきなり「その生気な目」と春人に言われ「え?」と桜が言うと「この世の中全部諦めてまーす。みたいなその目…、その目に相手はムカついていじめのターゲットにされるんだよ…きっと」と春人に言われ自分はそんな目をしていたのかと桜は初めて知った。 彼の言った事は間違ってないと桜は思った、なぜなら、桜自身もそう思っていたからだ。 「でもさ?悪いのはあっちの女子だろ?そりゃこっちも理由はあるけど、こっちは一人だろ?」と草太の言葉を聞き「人数が多い方が強いに決まってるだろ、ケンカと違って一対大人数だからタチが悪いんだよ」と春人は言うと「少し…休も」と春人はチョコを食べながらバナナミルクを飲み始めた。 二人も買ってきたジュースを飲みながらお菓子を食べ十五分程たって春人は再び話を戻した、「僕も…いじめられてた事あるんだ」と春人が言った言葉に桜は驚き、草太の方を見ると草太は黙ってうなずいた。 「僕の生き立ちとかだね」と春人は言うと少し寂しいそうな顔をした。 桜は理由が聞けなかった、「僕は…やり返した…それに草太もいてくれたし」と二人は顔を合わせると草太は照れながら笑っていた。「それにいじめていた奴ら他の奴をいじめ始めてその時僕は思った、(いじめなんて簡単に逆転できるし)って」と言うと桜は黙っていた「そんなものだよ…いじめなんて」と春人は言いバナナミルクをゆっくり飲んだ。 桜は(他人事しか思っていない)と思った。 「だけど…ひっくり返す方法がない奴には厳しいと思う、現状を壊すのだから、自分が傷付く…それは覚悟の上だよ」と言うと草太は桜の方を見た、桜は言葉が出ず黙っていた、バナナミルクを飲み終えた。 「それが出来ず…みんな死ぬんだよ」と春人は言った。 (何も考えていないようで考えていた)と桜は思った。 春人は「世の中を悟るのも悪ないよ?僕も根本的な考えは同じだから」と桜は春人に「諦めるって悪い事?」と聞くと「悪くない…逆に我慢できるのがすごいよ」と言われ桜は言葉が出なかった。 誰かに相談しても説教で終わり、自分が悪いと味方などいないと思っていた、しかし、二人は違うと桜は思った。 「花枝は頑張り過ぎだよ、一人で辛いよな…一人で頑張るのやめみたら?」と春人は桜に言った。 頑張る事をやめてしまったらもうやっていける気がしない、自分を守るために諦めて、強がる事しかないと桜は思った。 その時、春人は優しく笑いかけ不意に立ち桜の前に立ち、頭をそっと撫でて「誰かに言えば案外楽になるよ?」と言った、それを聞いていた草太は「ようするに俺達みたいな傍観者もいるって事」と言い残りのお菓子を三人は食べた。 [いじめは、加害者、被害者、傍観者がいる]その中でも傍観者が多く存在し、そして一番厄介な存在なのだ。 (春人さん達も結局傍観者だった…いじめられているのに助けてくれなかった)と桜は思っていた。その時、昼休み終了のチャイムが鳴り春人は桜の頭から手を離し「じゃ!」と言い続く様に草太が「元気出せ!また三人で昼飯食べようぜ」と言いながら立ち上がり二人は屋上から出ていった。 一人残された桜は、何とも言えない気持ちが胸の中に残っていた、桜は感情を込め「もー……何よ」と呟いた。 それから一週間が経ったある日、珍しく草太が休みだったので春人は昼を一人で買いいつとの所へ行った。 その頃桜は体育館裏へ呼び出されていた、だがいつもとは違い気が重いと感じていた(あの人に会いたい…)そう桜は思っていた。 その時だった、桜に温かい風が吹き付けた、桜は誰かに「大丈夫?」と言われている気がした。 いつものいじめっ子メンバーに桜はありもしない因縁を付けられていつもの様に暴力を受け、相手も女子だから『力』は弱いけど傷と痣は増えるけど、どうせやられるくらいならと諦めていたその時、桜は「ハッ」と思い出した。(今の私の目はこの人達にどう映っているのだろう…でも、あの人を裏切りたくない)と思い桜はコンテナの上に顔を向けると春人がいて目が合った、春人は口パクで「よっ」と言っていた。 この状態を見る春人の目は真剣に見えた、桜は今まで心の中で叫んでいた事を口に出した。 「誰か…助けて」と小さくでもしっかりした声に素早く反応したのは春人だった「遅い…もっと早く言え!」と言うと春人はコンテナの上から身軽に降りてきて王子の様に手を差し伸べた。 その時だった、また温かい風が桜を包み、不安になりながらもその手を掴むと春人は自分の背後へ桜を回した。 「何してんの?僕の大切な友達に」と言い桜を囲んでいた女子達に近づいて行った、桜からは表情が見えないが春人の重圧的なオーラに女子達は動揺し立ちさる事が出来なかった、きっとさっきの真剣な目を、しているのだと桜は思った。 春人はゆっくり女子達に近づきリーダー格の女子の胸ぐらを取り殴ろうとした時、桜は思わず服を引っ張ってしまった…二人の間に隙間ができた、女子達はその場を立ち去ろうとした時メンバーの一人が「こいつ神木だ」と言うと他のメンバーが「やばっ」と言い立ち去った。春人は追いかけず「ここ僕のお気に入りの所、もうくるな」と女子達に向かって叫んだ。 春人は桜を助けた、(まさかあんな言葉一つで本当に助けに来るなんて)と桜は思った、春人は「はい、一件落着」と言いながら優しく微笑んだ、その瞬間、(あぁ…終わったんだ)と桜は思ったとたん体の力が抜けその場に座り込んだ、すると春人も隣に座るとまた、二人の間を温かい風が吹いた、「いい風…やっと助け求めたね、悪い事じゃない…良い事だよ」と微笑みながら春人は言った。 いつの間にか、自分以外は敵だと思い込んでいたが春人に出会って近くに味方はいたんだと思った。 「神木さん…ありがとう」と言うと春人は「春人だよ」と言うと「えっ?」と聞き直すと春人は「春人で良いよ、僕も桜って呼ぶからさ」と言った。 桜は安心したのか涙があるれてきた、春人は何も言わず隣りにいた、桜は涙が枯れるまで泣いた。 気づくと橙色の夕焼けが空一面に広がっていた。 春人は桜の頬に冷たいいちごミルクを当て「嫌な事があったら糖分チャージしないと」と春人は言った。 春人は少年の様に笑顔で「明日は…何味にする? てか…どうせなら一緒に行こ」と言うと桜も笑顔で「うん!」と答えた。桜は春人のおかげで学校がたのしくなり、嫌いだった体育館裏は今では桜の好きな所へ変わった。 桜は、春人の方をチラッと見ると春人は優しく微笑み掛けてくれた。(これからは一人じゃなくて三人なんだ)と桜は思っていた。 春人は桜に向かって「これからは三人友達で仲良く助け合って行こうね」と言うと桜は「と…友達!」と驚いた。初めて友達が出来た、桜は嬉しかったのだ「うん」とニッコリ春人は微笑み掛けた。 その日から桜には友達が出来た、何でも話せる笑い合える友達が。
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