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動物宿舎
一方、ニホンジカの宿舎では100頭は超えるシカの群れが眠りに入ろうとしていた。
「ツノコ・・もう眠ったのか?・・」
誰かが小声でささやいている。
「えっまたイノシ、あなたなの⁉ どうしていつも、こんなに遅い時間に来るの?みんな起きちゃうでしょ⁉」
「だって明るいうちに降りてくると、人間が大げさに騒ぎたてるんだもん・・」
これはこれは、いつもご苦労様です。こんな夜遅くに、わざわざ山から降りて来たイノシシのイノシ君・・シカのツノコちゃんにいったい何の用があって来たのだろう?
「今夜はどんな用なの?」
今夜はなんて言うところ、どうやら今夜が初めてでは無さそうだ。
「どんぐりだよ! 今年は日照時間が短くってさ大きな穀物は殆ど全滅だ!特にどんぐりが少なくてさ、ツノコ何とかならないかな? クマの冬子もこれじゃ冬眠が出来ないって俺にボヤくんだよ!」
「だって異常気象そのものが自然現象なんだから、誰も責められないんじゃないの⁉」
「また異常気象のせいか?・・それだって自分勝手な人類が温室効果ガスをまき散らしたからだって言うじゃないか。本来共有するべき山を人間たちの都合だけで開発し、俺たちを山奥に追いやってしまいやがって。その挙句、この間なんかクマの冬子が市街地に迷い込んだと言っては、追い回される始末だぜ! いつから地球は人間主権になってしまったんだ⁉」
「そんな難しいこと私に言っても分からないわ。そりゃ友達だから何とかしてあげたいけどさ・・そうだ明日来なよ、食餌の時間にみんなから一つずつ貰って土の中に埋めて用意しておくからさ! そうだニホンザルのヒトミも誘っておいで」
「どうして? そんなことしたらヒトミにも分け前渡さなきゃならないだろう?」
「イノシあなたは沢山のどんぐりどうやって持ち帰るつもりなの?」
「口いっぱいに頬張るさ」
「幾つ頬張るつもり?」
「・・分かった! 分かったよ、ヒトミにも分けりゃいいんだろ⁉」
「ところで明日、園長さんって・・なにかやらかすつもりなのかね?」
「どうしてイノシがそんなこと言うの?」
「ここに来る前、職員宿舎の床下を通って来たんだけどさ、園長が神様お願いなんて言ってんの・・おかしくってさ!」
「神様にね?・・園長さんが神様にね?・・何を頼んだんだろう?」
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