悩みます

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「どうしたものか」  北柴賢司はパソコンの前で頭を悩ませていた。 パソコン画面に表示されていたのは『指導報告書』というタイトルと、所定のフォーマット。  指導対象隊員である南雲実咲の名前が書いてある以外、何も書かれていなかった。  この状態のまま、腕を組んで北柴は画面の前でかれこれ1時間ほど悩んでいる。  学内捜査部隊事務所の外では、運動部に所属している生徒たちが練習に精を出していた。どの運動部も夏季大会が近く、この大会を機に引退する3年生たちも多い。少しでも良い成績を残せるように彼、彼女らは毎日努力を積み重ねている。  その様子を自分の机から見ながら、北柴は再びパソコン画面に視線を戻す。  指導報告書は、夏休み明けにある新人隊員向けの合同研修時に新人隊員たちに教官から渡され、その報告書をもとに弱点を補う研修が2週間行われる。  指導担当隊員は報告書を書き上げ、班長の押印をもらった上で本部に提出をしなければならない。  本部への提出の締め切りまではあと2週間あるが、班長である東海林の押印をもらうことを考えると、あと数日で書き上げ、修正点があれば修正をしたのちに提出をする。  ため息を深く吐いてから、北柴はパソコン画面を閉じた。  指導対象の新人隊員――南雲実咲。  4月に入隊し初期研修修了した後、5月から正式にこの志心中学担当東海林班に配属となった。  初期研修時期の成績は中の中くらいと、取り立てて目立つ成績ではない。  指導教官からも『熱意と行動力がある』というコメントが書かれているだけだった。  何の期待もせず、実咲の指導隊員になった北柴は、実咲の行動と考えに頭を悩ませることばかりだ。  今もどのように指導すれば、他の班の隊員から見ても恥ずかしくない一人前になるのか悩んでいる。 「北柴さん、そろそろ上がりですよ?」
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