第八章〜夏祭り〜

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第八章〜夏祭り〜

それから数週間後の夕方、春人と桜は夏祭りへ行く支度をしていた。二人は神社の大きな杉の木の下で七時三十分に待ち合わせをしていた。春人は少し早く来ていた。 少ししてから待ち合わせの時間になった、春人は(どうした桜…来ないな…何してんだろ)とボーッと待っていると歩いて来た人に肩を取られ春人は転んだ、不意に手の方を見ると桜からもらった時計にヒビが入ってているのに気が付いた(何か嫌な予感がする)と思い神社前の道路へ出ようとした時だった。 (ピーポーピーポ)と救急車の音が耳に入ってきた、春人はもしかしてと思い歩き始めた、歩いているとすれ違ったあるカップルの会話が耳に入ってきた。 「あの子…可哀想に…反応なかったぽいし…」と聞き春人は急いで救急車の方へ走って行く途中にいきなり雨が降り始め春人の不安は大きくなった、救急車の近くに行くとすでに野次馬で溢れていた、春人はふと足元に目をやった瞬間足元から崩れ落ちた、そこには、桜にプレゼントしたネックレスが血で染まり落ちていたからだ、春人は力の入らない体を起こし人混みをかき分け前の方へ出るとそこには浴衣が血で染まり動かない桜が目に入った。 春人は見た瞬間駆け寄り桜を胸元に抱え込み大声で泣き叫んだ雨の音が聞こえなくなるらいに大きく。 少ししてから桜を乗せた救急車は春人のまえから居なくなり春人一人だけがその場に残された。 野次馬も引き道路には春人と桜のネックレスだけが残った。 その姿をじぃちゃん家から帰っていた草太が見かけ春人に駆け寄り何があったのか聞くが春人はまた抜け殻の様になり、目は死んでいた。 「おい!春人!しっかりしろ!」と草太かま必死に声を掛け春人の体を揺らすが反応は無くただ呆然としていた。 次の日、学校に二人はいた、二人はいつもと違い黙りしていた。春人の席からは桜の席がはっきり見える位置にあった。 春人は嫌になり屋上へ行きその日一日を過ごした。 草太は祭りの一件は次の日の新聞で知り春人に掛ける言葉が思い浮かばず黙って春人の隣りに居ることしか出来ずに居た。(あの時一緒に…三人で行けていれば…)と草太は草太なりに悩んでいた。 それから数日後、春人は桜との想い出が多く整理がつかないとよほどショックが大きかったのだろう、春人はその日から学校に来なくなって行った。 少しして春人はまた学校に通える様になった。 コンテナの上で一人ボーッとしていると後ろから「ここで何しているの?」と女の子の声がして振り向くと一人の女の子が立っていた。 そのこは[桜]に似た女の子で春人は思わず「さ…桜!」と言うとその女の子は「えっ?私は…春野香織[ハルノカオリ]です」と少し戸惑いながら言うと春人は「ご…ごめん」と謝りながら(似ている奴もこの世には星と居るよな)と思った。 二人を桜の時と同じ風が包んだ[運命]とはこう言う物かと春人は思った。
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